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「京都アニメーション」第1スタジオ近くの献花台で手を合わせる女性=8月、京都市伏見区
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「京都アニメーション」第1スタジオ近くの献花台で手を合わせる女性=8月、京都市伏見区
神戸新聞NEXT
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 従業員36人が犠牲になった京都アニメーション放火殺人事件を受け、被害者の実名報道を巡る議論が続いている。京都府警が実名公表を一定期間控えたため、報道機関側は10月、今後の事件・事故では速やかに実名を公表するよう、警察庁に申し入れた。メディアは実名報道の意義を訴えるが、公表を望まない京アニ事件の遺族の意向もあり、「なぜ実名が必要なのか」という市民感覚との溝は今も浮き彫りとなったままだ。(段 貴則)

 府警は犠牲者の身元特定後すぐの実名公表を控え、異例の対応を取った。遺族に加え、京アニ側も「被害者や遺族のプライバシーが侵害される」として、実名公表を控えるよう求めていたからだ。府警は、遺族に実名公表の可否、報道機関の取材に応じるかなど意向を確認。多くの遺族は実名に同意しなかったが、事件が重大で社会的関心が高く、公益性があると判断し、実名公表に踏み切った。

 通常、警察は事件の概要を公表する際、被害者を実名もしくは匿名とするかを判断する。性犯罪の被害者など、匿名とする事情がなければ実名で発表される。ただ、実名を発表しても、被害者側が匿名を望んでいることを報道機関に伝えることも多い。

 その上で、各メディアがそれぞれ報じる際に実名・匿名を判断。匿名とすべき事情がなければ「犠牲者の人物像を具体的に伝えることで、事態の重大性や理不尽さを浮き彫りにする」などの考え方に基づき、実名報道を原則としている。

 神戸新聞は京アニ事件の報道で、犠牲者全員の実名を記した共同通信の配信記事などを掲載。さらに、兵庫県内在住の遺族を神戸新聞記者が直接取材し、実名で犠牲者の人柄や遺族の思いを報じた。

   ■   ■

 事件後、会員制交流サイト(SNS)などでは、実名報道を原則とするマスコミへの批判の声が強まった。「京アニファン」が呼び掛けた実名公表を求めない電子署名も広がり、多くの賛同が寄せられた。

 9月、新聞社や放送局などでつくるマスコミ倫理懇談会の全国大会でも、実名報道について議論した。講演した曽我部真裕京都大教授(情報法)が「社会の理解を得られていない背景に、マスコミと被害者の間に報道の被害について認識のギャップがある」と指摘。実名公表はインターネット上で中傷される恐れがあるとし、マスコミが、業界全体のルールづくりに取り組むよう促した。

 大会に参加した各社の編集責任者は、実名公表に伴う集団的過熱取材(メディアスクラム)やネット上の中傷など、二次被害を防ぐ手だてを話し合った。京都新聞の担当者は、京アニ事件の遺族に取材が殺到するのを避けるための取り組みを紹介。報道各社と取り決めし、代表する社が遺族に取材が可能かを確認、情報を各社で共有する仕組みで取材に当たったという。

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 議論はまだ続いている。

 「実名は事実の核心であり、正確な報道に不可欠」。10月には、新聞、放送など19社でつくる在京社会部長会(東京)が警察庁に対し、今後の事件・事故では身元が確認され次第、速やかな実名公表をするよう文書で申し入れた。

 一方、神戸市立東須磨小学校の教員間暴行・暴言問題で加害教員が匿名報道されていることも、実名問題への関心を高めている。SNSには「なぜ京アニ事件の被害者は実名で報じるのに、加害教員の実名は出さないのか」と、マスコミを批判する投稿も目立っている。

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