8月末にシャットダウンされたスーパーコンピューター「京」の後継機「富岳」の機材搬入が3日、神戸・ポートアイランドの理化学研究所計算科学研究センターで始まった。「富岳」は、世界で初めて毎秒1京回(京は兆の1万倍)の計算速度を達成し、世界ランキング1位を獲得した「京」の最大100倍の性能を目指す。すでに試作機が省エネ性能ランキングで世界一となっており、“日の丸スパコン”新時代の幕開けに関係者の期待が高まっている。
この日、富岳を構成する計算機約400台のうち6台が搬入された。中央演算処理装置(CPU)が384個入った計算機1台の大きさは、幅約85センチ、奥行き約140センチ、高さ約200センチ。石川県かほく市の工場を2日に出発したトラックが午前9時ごろに到着すると、作業員らは京が撤去された後の場所に慎重に運び入れた。今後は、残りの計算機を来年6月ごろまでに順次搬入し、周辺機器を同10月ごろまでに設置。2021年の運用開始を目指すという。
松岡聡・同センター長によると、富岳は、京が1年かかった計算を4日で終える高い能力を持つが、最大の特徴は「巨大なスマホ(スマートフォン)」と例えられるほどの汎用性の高さという。富岳用に開発した技術が広く社会で使われることを重視し、世界的に普及する文書作成ソフト「ワード」なども使うことは可能だ。医療や防災、産業、エネルギーなど各分野で成果を上げることが期待されており、人工知能(AI)に対応した機能も意識して取り入れた。
理研などは11月、富岳の試作機がスパコンの省エネ性能のランキング「グリーン500」で世界1位になったと発表。計算能力の高さだけではないことを強調している。(霍見真一郎)
