えっ、シェイクアウトしないの!? 阪神・淡路大震災が発生した1月17日前後に実施し、恒例になりつつある「シェイクアウト訓練」を、神戸市が来年1月17日に実施しないことを決めた。緊急速報メール(エリアメール)を訓練に使うことに対する市民の抵抗感が根強いことなどを踏まえたという。専門家らからは「意義のある訓練なので、やり方を工夫すれば」との声も上がっている。(竹本拓也)
シェイクアウト訓練は、だれでも、どこでも、その場でできるのが特長。参加者は、姿勢を低くする▽頭を守る▽揺れが収まるまで動かない-の3点を意識した行動をとる。2008年に米国で生まれ、日本では12年に東京で始まった。兵庫県では13年に西宮市が初めて実施。明石市や猪名川町でも取り組んでいる。
神戸市は震災20年の15年1月15日に初めて実施。若者の防災意識を高めようと、アイドルグループAKB48も駆け付け、緊急速報メールを受けた約34万6千人が参加したとされる。
その後毎年1月17日前後に実施してきたが、訓練直後に多くの苦情が市危機管理室に寄せられるようになったという。その大半が緊急速報メールに関する内容。午前10時に大津波警報を受けた避難指示が一斉送信される。消音のマナーモードにしていても受信音が鳴るため「うるさい」「大事な会議中だったのに」といった声をはじめ、偶然神戸市内を通行していた市外からのドライバーらから「安全運転に影響が出る」との苦情も多いという。
また、近年災害が相次いでいることも一因。神戸市内では18年度に10回以上、実際の避難情報が同メールで配信されており、同室は「『避難情報慣れ』してしまい、緊急速報メールを受信できない設定に変更したり、電源を切ったりするユーザーがいる」とする。同メールを無料提供している携帯電話大手3社も訓練用の使用を推奨していない。
来年1月17日の訓練は、市が開始時間を設定しないため、同メールの配信や防災行政無線の放送もない。代替として市ホームページから訓練用音源をダウンロードできるようにし、全公立小中学校には音源のCDを配布する。
一方で異論も出ている。兵庫県立大大学院減災復興政策研究科の阪本真由美准教授(防災教育)は「シェイクアウト訓練だけでは効果は望めない。その後に避難経路を歩いたり、家具の固定状況を確認したりすることを組み合わせてこそ意味がある」としつつ「日本では机の下に隠れることばかり教えられてきた。シェイクアウト訓練には、その場に応じた身の守り方を考えさせる大きな意義がある。成果と課題を検証し、続けてほしい」とする。
同室は「過去5回で認知度は向上し、市主導でのシェイクアウト訓練は一定の役割を終えたと考えている。今後は職場や学校で自発的に取り組んでほしい」としている。
