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調査報告書を折出健二委員長(中央)から受け取る長田淳教育長(左)=11日午前、神戸市役所(撮影・鈴木雅之)
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調査報告書を折出健二委員長(中央)から受け取る長田淳教育長(左)=11日午前、神戸市役所(撮影・鈴木雅之)

 神戸市東灘区の市立六甲アイランド高校で2017年12月、当時1年の男子生徒(18)が長時間の別室指導後に校舎から飛び降りて一時重体になった問題で、原因究明に当たる調査委員会は11日、教員による一方的な別室指導が生徒に自殺を決意させたとする報告書を公表した。報告書の要旨は次の通り。

■事実経過

 2017年当時、いずれも1年だったA、B、C、Dは同じクラスの生徒で仲もよかったが、Dの私的なトラブルの話を聞かされたことなどを契機に、9月半ば頃からA、B、CはDと距離をとるようになった。この頃からA、B、Cは3人の会話の中でDのことを動物に例える悪口のあだなで呼ぶようになり、そのような呼称で呼んでいることがいつのまにか周囲に漏れるようになった。

 また、AはDがツイッターで行った「男なら堂々と言え」「外道め」との書き込みが自分に向けられたものであると考えるようになり、12月、Aは他の同級生(E)の名前を使ったアカウントで「そうです。私が外道です」と、Dのツイッターの書き込みに対する仕返し、反論ともいえるような書き込みを行った。

 教員乙、丙によるクラスの生徒の聴き取りから、AがEの名前を使ったアカウントを作っていること、Cがこれをフォローしていることなどがわかり、12月20日、教員甲らは、クラスの生徒から提供されたスクリーンショットをもとに、アカウントを作成したのがEでないことを確認した上で、A、B、Cに別室指導を行うことを決めた。

 21日、A、B、Cに別室指導が行われたところ、B、Cに対するこの日の別室指導は短時間(1時間程度)で済んでいるが、Aに対する別室指導は朝8時頃から午後3時30分頃まで行われた。この間、Aは、甲から「退学になる」旨を示唆された旨を述べているが、甲はそのような発言をしたことを否定しているのであるが、後述するとおり、甲の述べるところを前提にしても、Aが「退学になるかもしれない」と受け止めざるを得ない発言が甲からなされたことは否定できない。

 1日目の指導後、帰宅したAは、遺書を書き、Cに対し「大丈夫。退学になったら死ぬ予定だから」「俺さ、結構怖いのよね、笑笑」「退学処分。てレッテルが貼られるの」などの言葉をラインで送った。

 22日、A、B、Cに対する別室指導が行われたところ、Aに対する別室指導は朝8時、登校してすぐにカウンセリングルームヘ移動して始まり、午後4時45分頃まで行われているが、午後5時頃、指導していた教員がカウンセリングルームを離れた間にAが校舎の5階の窓より転落した。なお、別室指導において、A、B、Cがこれまでの経緯を弁明する機会は、21日、22日ともに与えられていない。

■問題の分析および考察

 本校では、問題行動があると考えられる生徒に対し、年次主任、副主任(年次指導担当)が担当する年次指導(学年指導)、生徒指導部、特別指導委員会が担当する特別指導が行われているが、いずれの指導においても、指導の前に事実の確認を行うことが原則である。本事案においては、申立人に対し、21日と22日の2日間、別室指導の方法による年次指導が行われているのであるが、その別室指導では、申立人に対し、計16時間にわたってカウンセリングルームの1室に1人隔離し、自由に出入りすることができないように監視しながら、執拗に自認や反省を求め、反省文を書かせる等の指導が行われた。

 本事案の別室指導は、有形力の行使はないため、体罰には該当しないものの限界に近い事例と考えられるだけでなく、①対象となった生徒に、計12時限分の授業を受けさせていない点で、生徒の学習権(学校の教育施設を利用し授業等の教育課程を履修できる地位ないし権利)を奪い、個人の尊厳としての名誉を脅かしていること、②長時間にわたり一人だけ隔離され、他の生徒と連絡をとらせず、言わないと不利益があると圧力をかけながらの指導が行われている点で事実確認のための調査というより自認を強要するものとなっていることといった問題を抱えている。

 別室指導が必要だったとしても、個人の尊厳もしくは学習権保障の観点からすると、必要最小限とすべきであり、2日間計16時間の別室指導が必要だったとは考えにくい。指導目的を超えた一種のハラスメントと解釈する余地もあり、かかる別室指導が社会通念上妥当と言えるか疑問である。2017年10月、クラスの生徒からDが「Cら3名からいじめられている」との相談が、同年12月にはクラスの生徒から「からかい(いじめ)はエスカレートしている」との情報が教員に提供され、12月20日、教員はA、B、Cに指導を行うことを決めたが、被害生徒への配慮から被害生徒へのいじめがあることを特定せず、指導に際しては、加害者である生徒本一人の罪悪感を問いただし、自認して反省するだろうという方向づけが内々に決定したと考えられる。そのため、別室指導においては、申立人たちに言外に含ませたいじめ行為を認めさせるという指導になった可能性が高い。

・問題点

 生徒に問題行動があったと考えられる場合、学校、教員に当該生徒を指導する権限が認められることはいうまでもないが.本事案に直接かかわる年次指導(学年指導)が、懲戒処分や特別指導のように法令や内規に根拠を持つものでない以上、年次指導のもとで、生徒を退学、謹慎といった処分に付すことはできないし、そのような可能性のある旨を生徒に暗示することも不適切であるということになる。しかし、本事案においては、指導に当たった教員の弁解を前提にしても、別室指導において、「年次(=年次指導)で終わらない」との発言が繰り返しなされている事実を認めることができるところ、かかる発言自体、申立人には退学処分があり得ると思わせる不適切な発言であったということができる。したがって、本事案では、申立人が、指導担当の教員の発言によって、自分に対する指導が年次指導で終わらず、特別指導へと発展し、退学になるかもしれないと受け止めた事実を認定することができる。

・精神的状態

 結局、2日間にわたって孤立を強いられた別室指導を受け、さらに指導を受けた上で退学になると思い込んでいたAは、自死を決意するほどの精神状態に追い込まれ、22日の午後5時頃、教員が席をはずしたのを見て、衝動的に自死を決行しようとしたと推察される。学校は母親を呼んでいたが、母親に会えば自死ができなくなるという思いが自死の決行を後押ししたかもしれない。

■結論

 21日の夜に申立人が遺書を用意し、同様に別室指導を受けたCとのラインのやりとり(21日夜)で自死の可能性を書き込んだ状況を確認したことにより、委員会は、申立人がこの高校にはもうおれなくなるかもしれないと思うほどに、当日の別室指導で「年次で終わらない」等の一連の不適切な発言があったことが問題であると判断した。

 すなわち、教員が言外の意味を読みとること(いじめをしたことを素直に認めること)を強要し、なおかつ「本校には自分は必要ない」と申立人が思わされる言動を繰り返し発し、これらが申立人の希望を著しく失わせる要因になったことは否定できないと判断した。

 さらに、申立人は前述したとおり、21日の段階で、「退学が決まれば自殺を決行しよう」とまで考えるに至っていたところ、このような精神状態にあった申立人にとって、22日の指導は、弁解を一切許されず「担任にうそをついた(期待を裏切った)」と言われ、同人がこれまで積み上げてきた自己像が崩壊するような不安を感じたと推察できる。

 以上のことから、22日午後5時頃に発生した申立人の「飛び降り」は、同校で学べる可能性が閉ざされたと思わされたこと、頼りにしていた担任教員らの期待を裏切ったと決めつけられたことが主な要因となって、自死を決行したものと判断できる。

 生徒指導の面から見ると、本事案が学校教育に投げかけている点を見落とすことはできない。すなわち、対話なき一方的指導に対する問題提起が含まれていると考えられる。

 その意味で一高校での、一人の生徒の「転落事故」という個別の案件にとどめてはならず、「毅然とした指導」とゼロトレランス(非寛容)方式を過剰に結びつけて行われる威圧的・権力的指導に対しても疑問を投げかけるものである。

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