2020年の干支(えと)「子(ね)」に合わせ、国内に3点しか現存しないという江戸時代の書物「鼠草紙(ねずみそうし)絵巻」の絵柄写真を使った無料通信アプリ「LINE(ライン)」のスタンプが登場した。企画したのは、絵巻の一つを展示する丹波篠山市立歴史美術館(兵庫県丹波篠山市呉服町)の運営団体。物語に登場するネズミの主人公と家来にちなみ、「君に任せたよ」「その件なら順調です」など、上司と部下のやりとりに使えそうな40種類を作った。(金 慶順)
鼠草紙は室町期に短編物語として創作され、江戸時代に絵巻が描かれた。大名家を中心に人気を集めたとされ、丹波篠山市の絵巻は江戸時代の篠山藩主の妻が嫁入り道具として持参したと伝わる。国内3巻の中でも色合いが美しく、市指定文化財にもなっている。
主人公は人間として生きたいと願う100歳のネズミ「権頭(ごんのかみ)」。優秀な家来「左近尉(さこんのじょう)」の後押しもあって人間の娘と結婚する。だが正体がばれて逃げられ、最後は出家する-という筋書きだ。
同館などを運営する一般社団法人「ウイズささやま」は17年、絵柄と篠山弁を組み合わせたスタンプを発売し、これまでに約900個が売れた。今回はその第2弾で、「篠山弁を知らない人でも使いやすいように」と考案。上司と部下のやりとりや、職場でのコミュニケーションをテーマに「言われたい言葉」「言われたくない言葉」などのアイデアを法人内で出し合った。
「いつもありがとう」「さすがだね」。上司側のスタンプには感謝や激励の言葉が並ぶ一方、「知らんけど」とちょっと無責任な内容も。「了解しました」「後ほどご報告します」といった一般的なメッセージが並ぶ部下側にも、「また二日酔いですか?」などの嘆き節が交じるが、つぶらな目をしたネズミの絵柄がどこか和ませてくれる。
同僚との連絡で愛用しているという同法人の学芸員大西由喜さんは「使いどころの多いせりふとコミカルな絵柄を楽しんで」。40種類セットで120円。ラインのスタンプショップで「鼠草紙絵巻」と検索すれば購入できる。同館TEL079・552・0601









