「愉快な気分になりますが、役に立つことはありません」をスローガンに、イベントも展開するウェブサイト「デイリーポータルZ」(https://dailyportalz.jp/)。最近では地味な仮装を競う「地味ハロウィン」で波紋を広げるなど、知る人ぞ知る集団である。その関係者による新企画「2019年インターネットのおもしろかった記事」に、弊社の記事「新聞社のネット記事って、英数字はなぜ全角?」(2019年3月19日公開)が選ばれた。この手の回顧ものは自社記事で編集するのが常だが、他社にも門戸を広げるさすがの懐の深さ。「狭い了見ではなく、インターネットメディア全体の発展を願っている」という同サイトのウェブマスター林雄司さんに話を聞いた。(ネクスト編集部 金井かおる)
■「やられたーこれおもしれえなー」
「2019年インターネットのおもしろかった記事」は、デイリーポータルZの関係者9人が、5部門(取材力があっぱれ、インタビューが素晴らしい、カルチャー!、インターネット的、メディア以外の章)で合計21本の記事を選出。「やられたーこれおもしれえなー。と思ったよそのサイトの記事をまとめました」。
選出された弊社記事は、新聞社のネット記事のURLはなぜ全角表示なのかという内容だった。社内的な反響はさておき、「だから新聞社はダメなんだ」「ユーザー目線がない」など、社外から厳しい声を多数頂戴した。そうした叱咤激励が弊社ウェブサイトのシステム部門を動かし、公開から約1カ月後、弊社ネット記事のメールアドレスとURLは半角表示となったのである。
■「軽い気持ちが反響大きく」
ーこの企画は今年初めてとか。
「はい。いろんなメディアの作り手はライバルではあるのですが同じ志を持つ仲間という意識もあるので『インターネットおもしろリーグ』と“リーグ”を自称してみました。年末の野球の好プレー珍プレー大賞のようなイメージで、リーグの良かった記事を集めました」
ー選考基準は。
「きちんとした基準はなく、社内関係者に呼びかけて、答えてくれた人の意見をそのまま載せただけでした。軽い気持ちで作ったのに反応が多くて驚いてます」
ー林さん自身は、1日何時間ぐらいネット記事を読む?
「トータルで2時間ぐらいでしょうか。ツイッター経由で流れてきた記事を中心に読みます。特におもしろい記事は普段からフェイスブックに投稿しているので、今回の選考にあたり、自身の投稿を読み返しました」
毎日必ず読むサイトはあるのだろうか。ブックマークしているサイトを尋ねると意外な答えが返ってきた。
「日経新聞と朝日新聞withnews、それからBBCは必ず読みます。なんかかっこいいですね(笑)」
ー弊社記事は「インターネット的」部門でした。
「インターネットはいまやインフラでそれ自体に特に色がないものですが、ウェブサイト黎明期は“サブカルチャー趣味がある人が表現する場”“インターネットそのものを語る場”という色が強かったと思います。それをインターネット的と表現しました。自分がその時代にネットに触れたのでついひいきしてしまいます。御社記事はURLの全角表記というインターネットならでは話題だったのでこちらに分類させていただきました」
ー弊社記事の印象は。
「書き方に親しみを感じました。紙媒体や新聞記者という堅い存在…すいません…ではなく、人っぽさを感じます。新聞記者のような文章力と取材力があり、しかも(人数も)たくさんいる人がこんなウェブメディアみたいな書き方でサイトを作り始めたらどうしようと焦ってます」
ー来年も発表を?
「はい。評判がよかったので半期か四半期ごとにまとめようと、今日(7日)の会議で決めました。できればほかのサイトの方にも選者として参加してもらって、ちゃんと取材してあるおもしろい記事を互いにほめ合う機会を作りたいと思ってます」
【記事の筆者、黒川記者のコメント】「全角半角の記事が憧れのデイリーポータルZさんに選ばれたのはムチャクチャうれしいです! 渾身のオチにも言及してくださっているのを見て、思わず泣いてしまいました。思えば新聞記者になって幾星霜、これが一番嬉しかった出来事かもしれません」
■「新聞社のネット記事って、英数字はなぜ全角?」(https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201903/0012161890.shtml)









