忌まわしい緑のあいつ-。外出先でくっついてきたり、干していた洗濯物に潜んでいたり。寒くなると、音も無く忍び寄って悪臭を放つ。そう、やつはカメムシ。厄介者を見つけたらすぐに追い払いたいところだが、用心しないと逆襲を食らうかもしれない。以下は、記者の被害レポートである。
12月下旬、不幸は突然やってきた。
早朝、神戸市中央区の海沿いで取材中、襟足あたりに突然違和感が。軽いやけどにも似たヒリヒリ感。「虫か?」と周りを見渡したが、それらしきものはいない。間もなく、覚えのある激臭。「くさっ!」。上着を脱ぐと、体長1センチほどのカメムシが出てきた。悪臭源はこいつか。会社に戻って、鏡に映すと、首の付け根あたりに、五円玉ほどの大きさほどに赤茶色に腫れていた。
あの痛みは何だったのか。虫による皮膚病に詳しい、兵庫医科大学(兵庫県西宮市)皮膚科学の夏秋優准教授に聞いた。「Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎」の著者でもある。
カメムシは外敵から身を守るため、脚の付け根にある「臭腺」から臭いを分泌する。この分泌物には「アルデヒド」と呼ばれる成分が含まれ、生き物にとって有害なのだ。付着するのが少量なら臭いだけで済むが、服の中にカメムシが入ってしまったり、素足で踏んづけたりすると、高濃度のアルデヒドが皮膚に付着し、炎症を起こすという。記者の場合、今も茶色い跡が残る。
不幸な事態が生じたら、どうすればいいのか。
「すぐに石けんなどで洗い流してほしい」と夏秋准教授。ただ知らない間に付いてしまうこともあり、すぐに対応できるとは限らない。カメムシはこの時期越冬するために室内に潜り込み、服やくつの中で息を潜めていることもある。「カメムシが隠れていないか確認することが一番の対策」(夏秋准教授)という。
自らを守るためとはいえ、やっかいなカメムシの最後っ屁。被害に遭わないにためには、ほどよい距離感が必要なのかもしれない。(秋山亮太)