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一度は作られたが幻となった「ONO消しゴム」と本家のMONO消しゴム(奥)=小野市内
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一度は作られたが幻となった「ONO消しゴム」と本家のMONO消しゴム(奥)=小野市内

 大手文具メーカートンボ鉛筆(東京)による「MONO消しゴム」のパロディー版として、兵庫県小野市観光協会が昨秋に無許可で作った「ONO消しゴム」。同協会は製造した千個を返品したが、報道で小野市が一躍有名になると「市のアピールに」と改めて同社に類似品1万個の製造を依頼した。模倣品はどこまで許されるのか。同協会はトンボ側に十数種類のデザインを提案したが合意には至らず、両者の綱引きが続く。(笠原次郎)

 MONO消しゴムの本物は青白黒のストライプ柄。これに対し、同協会が最初に作ったのは水色、白、濃紺の3色を使い、「MONO」の代わりに「ONO」と記した消しゴムだった。

 特許庁商標制度小委員会で委員を務める神戸大大学院の島並良教授(50)は、そもそもこのデザインが商標法に触れる可能性を指摘。本物に近い3色を使った商品は「消費者の誤認や混同の可能性がある」とみる。同協会が別に作った黄、白、緑でも「本家の別パターン。広い意味で混同を招く」として不正競争防止法違反の恐れがあるという。

 商標法は2015年に改正され、知的財産として保護する商標の対象に音、位置、動き、ホログラム、色彩の五つが新たに加わった。以降、これまでに300件近い認定があった音に比べ、色彩はMONO消しゴムなど8例しか認められていない。島並教授は「トンボ鉛筆はようやく認められたものを大事にしたいはず」と推測する。

 大手電機メーカーで勤務し「工業デザインと知的財産」について学生に教える大阪工業大大学院知的財産研究科の大塚理彦(みちひこ)教授(58)もトンボ鉛筆に同情的だ。同社は類似品を防ぐため「HOMO」や「NOMO」も予防的に商標登録してきたといい「それだけ大事にしているブランド。協会がONOの3文字に固執すれば、トンボ側は拒否する」とみる。

 しかし、関西にありがちなパロディー商品。「笑って済ませて」と言えないのかという点については「裁判所は模倣品を作った意図は考慮しない」と大塚教授。法律に触れないようデザインを変えた場合「もはやパロディーとは言えない別物になるでしょう」と話す。

 同協会はトンボ側に挙げていた十数種類の提案を全て断られたというが「互いが納得できる形で、何とかコラボレーションを実現させたい」と協議を続ける。

 島並教授は合法的なデザイン案として「パロディー感は薄まるが、『ONO』を『小野』に変え、『あーあの消しゴムね』と笑ってもらえればよいのでは」と提案している。

     ◇     ◇

■全国初の色彩商標、トンボ鉛筆

 商標を巡っては、日本では文字や図形、記号、立体的形状しか登録を認めてこなかったが、音や色彩など幅広く認定する欧米に倣って方針転換し、2015年に商標法が改正された。

 その後、音や色などで他社との差別化を図る企業が続々と申請し、計5タイプで502件(1月8日現在)が認められている。

 MONO消しゴムは1969年に発売され、半世紀を超える歴史を誇る。「MONO」は「唯一」「比類なき」を意味するギリシャ語に由来する。その品質は消しゴムの代名詞とも評されるほどで、長期にわたる商品の信頼性とデザインの特徴から17年、ハードルが高いとされる色彩商標に全国で初めて登録された。

 色彩ではほかに、セブン-イレブン・ジャパンの「白、オレンジ、緑、赤」の4色カラー▽三井住友銀などの「濃緑、薄緑」のツートンカラー▽UCC上島珈琲の缶コーヒー「UCCミルクコーヒー」の茶、白、赤の3色柄など計8件が認められている。

(笠原次郎)

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