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「同胞がひどい状況に置かれていることを知ってほしい」。取材に応じたクルド人男性=兵庫県内
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「同胞がひどい状況に置かれていることを知ってほしい」。取材に応じたクルド人男性=兵庫県内
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 「国を持たない世界最大の民族」といわれるクルド人。イラクやイランなどにまたがり、中東地域に広く居住する山岳民族は、シリア内戦でトルコや過激派組織「イスラム国」(IS)などからの攻撃と差別にさらされ、住み慣れた家を追われている。内戦の混乱が収まらない中、関西で暮らす2人のシリア系クルド人が内戦と迫害にさらされる現状を語った。(杉山雅崇)

 2011年以降続く内戦から逃れるため、数年前に来日した自動車整備工ファハドさん(36)=仮名。同郷で、内戦前から日本で暮らす貿易業ウサインさん(37)=同=を頼って来た。2人の国籍はシリアだが、故郷はトルコの支配下に置かれている。遠く離れた日本国内でも差別や迫害を恐れ「身元を明かさない」との条件で神戸新聞社の取材に応じた。

 ウサインさんは「昔は幸せだった」と悲しそうに振り返る。かつてのシリアでは、さまざまな民族や宗教が平和に共存していたという。「クルド人、シリア人、キリスト教徒、ユダヤ教徒。みんな仲良かった」

 内戦は隣人同士の仲を引き裂いた。政府勢力やイスラム国など、さまざまな勢力が複雑に敵対し、クルド人民兵組織も戦いに加わった。多くの人びとが亡くなり、民族同士の対立が表面化した。

 故郷は戦渦に巻き込まれた。内戦のさなか、ファハドさんの母親は呼吸器系の病気にかかったが、包囲された街に医療品はない。十分な治療が受けられないまま、3年前に亡くなった。

 迫害は続いている。65歳だったウサインさんの伯父は、民兵組織との関わりを疑われて捕まり、現地の警察から激しい拷問を受けて亡くなったという。「トルコでもシリアでもクルド人は少数派。差別され、低い位置に追いやられている」と、同胞が置かれた現状を説明する。

 2人にはそれぞれ妻がおり、日本での生活は安定しているが、自分がクルド人であることを隠し続けている。クルド人勢力と敵対したアサド政権を支持する在日シリア人も多いからという。「僕たちがクルドと分かれば、周囲の態度が変わるかもしれない」とウサインさん。ファハドさんも、居住する自治体の職員にクルド人であることを打ち明けたのは、来日後しばらくたってからだった。

 内戦状態の故郷が頭から離れない。「今のシリアには満足な燃料もない。どうやって冬を越すんだろう。とにかく心配」とファハドさん。それにうなずいたウサインさんも願う。「日本人、正直言って私たちのことをよく分かってない。自分の国を持ってないクルド人のことを、知ってほしい」

■国持たない世界最大の民族

 クルド人は、トルコやイラク、シリアなどの山岳地帯に居住し、ペルシャ語系のクルド語を母語とする。人口は2500万~3千万人とされる。彼らが住む地域は「クルディスタン」とも称されるが、各国で少数民族とされており、多数派民族からの分離独立を目指す動きもある。

 シリア内戦では、クルド人でつくる民兵組織が、政府勢力や過激派組織「イスラム国」などと戦った。クルド人勢力は米国の支援を受けて活動していたが、2019年10月、トランプ大統領の指示で米軍がシリア北部から撤退。時を同じくしてトルコが同地に侵攻し、後ろ盾を失ったクルド人は攻撃にさらされ、難民がトルコに殺到した。

 現在もシリアの一部地域がトルコの影響下に置かれているほか、国内での政府勢力と反政府勢力の戦闘は継続中で、情勢は不安定のままだ。

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