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車いすで簡易スロープを利用する飯塚理能さん=明石市本町1
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車いすで簡易スロープを利用する飯塚理能さん=明石市本町1
明石市の公的助成を利用した筆談ボードで注文する涌井由賀里さん(右)=明石市大明石町1
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明石市の公的助成を利用した筆談ボードで注文する涌井由賀里さん(右)=明石市大明石町1

 障害などに関係なく、「共生社会」の実現に向け、先進的な取り組みを進める兵庫県明石市では、全国初の公的助成制度を活用して筆談ボードや車いす用スロープなどを導入する飲食店などが増えている。「みんな一緒に」社会参加できるまちとは-。障害がある市民とまちを歩いた。(藤井伸哉)

 市は2016年4月、障害者差別解消法の施行に合わせ、障害者配慮条例を施行。障害を理由とする差別を禁じ、費用や人手の負担になりすぎない範囲で設備やサービスを提供する「合理的配慮」を求めた。

 さらに同年、全国で初めて公的助成制度も導入。筆談ボード、スロープ、点字メニューの作成、手すり設置工事の費用などを支援している。対象は、飲食店や美容院といった民間事業者、地域の公民館や集会所など幅広い。不特定多数が利用し、障害者の利便性が増す場所であれば、積極的に補助を認め、教会に手すりを設置したケースもある。

 1件最大20万円で、18年度までに計359件約800万円を助成。当初は手軽な物品の導入が多かったが、本格的なスロープ工事などが増えているという。

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 「買い物や食事が楽しくなりました」

 明石駅構内の飲食店「都きしめん」で、筆談ボードに「梅の香きしめん ネギ抜き」と書いて注文した涌井由賀里さん(39)が、手話をしながら笑った。

 涌井さんは、耳が聞こえず、発声ができない。メニューを指さして注文できるが、筆談ボードがないと「ネギ抜き」や「ご飯少なめ」などの細かい要望が難しい。筆談ボードがない店では、我慢したり、買い物後に後悔したりすることが多かったという。

 同駅近くの洋菓子店「くるみや」では、脳性まひで車いす生活を送る飯塚理能(ただよし)さん(40)の姿が見えると、従業員が簡易型のスロープを手際よく取り出し、店に案内した。筆談ボードもある。担当者は「簡単な道具一つでコミュニケーションが円滑になった」と驚く。

 両店とも、従業員が障害者らへのサポート力を高める「ユニバーサルマナー」の研修を受講。都きしめんの担当者は「障害者も健常者も、丁寧に接客したい気持ちは同じ。やさしい雰囲気が広がっている」。

 明石市は、障害の有無や年齢に関係なく「インクルーシブ(包括的)」に暮らす共生社会の実現に向けた条例も検討中。障害者施策担当の森太郎係長は「バリアフリーという言葉のように、共生社会やインクルーシブが一般的になる日を実現したい」と意気込む。

■東京パラ前に啓発課題

 東京五輪・パラリンピックに向け、政府は自治体に「共生社会ホストタウン」への参加を促すが、兵庫県内では41市町のうち、登録は明石、神戸、三木の3市にとどまる。内閣府の「障害者に関する世論調査」(2017年)で、「共生社会の考え方を知っている」と答えた人は46・6%と半数を下回っており、取り組みが十分に進んでいるとは言い難い。

 「-ホストタウン」は、パラリンピアンとの交流や心のバリアフリー、ユニバーサルデザインのまちづくりを目指して17年11月にスタート。明石は第1陣として全国6自治体の一つに選ばれた。その後、さらに進んだ役割を果たす「先導的共生社会ホストタウン」(全国12自治体)にも神戸とともに選ばれた。

 だが、取り組みの認知度は低い。同調査では、障害者差別解消法について「内容を含めて知っている」のは5・1%だけだった。

 内閣府の担当者は「パラリンピアンの活躍を身近に感じて理解を深めてほしい。大会を共生社会啓発の起爆剤にしたい」と話す。

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