兵庫県尼崎市教育委員会は、同市立小学校の3、4年生が続けてきた独自のそろばん授業「計算科」を本年度いっぱいでやめる方針を固めた。計算科は、集中力を高めようと2004年度に導入したが、新学習指導要領で新年度から英語が必修化されるなど、授業の維持が難しくなり押し出される形となった。(大盛周平)
そろばんを使う計算科は、内閣府の構造改革特区制度に「尼崎計算教育特区」として申請し、杭瀬小学校で始まった。地域のそろばん塾の講師らも協力して実施校を増やし、09年度からは全校に拡大。現在は市内41小学校の3、4年生が総合的な学習や算数など、年間50回の授業で学ぶ。
計算科の目標は大きく二つ。一つは、そろばんの習得により、計算の仕組みを理解し、正しく確実に計算できる技能を養うこと。もう一つは、計算の楽しさを体得し、日常生活で積極的に計算を活用しようとするように育成することだ。
実際、全国学力・学習状況調査(学力テスト)の成績に一定の向上がみられ、市教委は「学力の基礎的な部分が改善されている」と評価してきた。
だが、20年度から英語が必修となり、小学3、4年生も新たに「外国語活動」の時間に年35回の授業が求められる。加えてプログラミング教育も導入されるため、計算科を維持すると全ての授業時間の確保が難しくなり、計算科の継続は難しいと判断した。
同市教委の担当者は計算科の廃止について「決して計算科に問題があるのではなく、時代の新しい流れに対応するため」と説明する。