JR西日本の社員のうち、2005年に起きた尼崎JR脱線事故後に入社した人が、今年4月1日現在で52・1%と半数を超えた。25日に事故から15年の節目となるが、遺族らからは実際に事故時を経験した社員の減少から、風化を懸念する声も上がる。同社は風化防止策として、事故車両の活用など新たな社員研修プログラムの検討を始めた。
同社には今年、4月1日付で641人が入社。契約社員やシニア社員を除いた社員数は約2万7150人で、うち事故後の入社が約1万4150人となった。事故後5年の10年時点では20・0%、15年時点で34・9%だった(いずれも4月1日時点)。
同社は1987年の国鉄民営化以降、96年までの9年間、採用人数を抑制。団塊の世代の大量退職などに伴い、この間に若返りが進んだ。19年度の平均年齢は39・6歳となっている。
事故を経験していない世代が過半数となったことに、長谷川一明社長は「事故に関する教育は毎年全社員に実施しており、事故後の入社が増えたからといって、必ずしも風化しているわけではない」と強調する。
一方で、社員教育の方法については「なぜ今、この安全対策を実施しているのかということについて、脱線事故との関係性に結び付けて、理解していく組み立てが不十分だった」と反省を口にし、教育プログラムを見直す考えを示した。
また遺族らには、事故車両7両を大阪府吹田市の安全施設に保存し、社員教育に活用することを提案しており、「安全教育は意味づけをして、繰り返し実施していくことが重要。社員の意識をさらに高めていきたい」と話している。(前川茂之)
【尼崎JR脱線事故】2005年4月25日午前9時18分ごろ、尼崎市のJR宝塚線塚口-尼崎間で、宝塚発同志社前行き快速電車(7両編成)が制限速度70キロの急カーブに約116キロで進入し脱線。線路脇の9階建てマンションに激突し、乗客106人と運転士が死亡、493人が重軽傷(神戸地検調べ)を負った。業務上過失致死傷罪で在宅起訴されたJR西日本の山崎正夫元社長は、12年に無罪判決が確定。井手正敬元会長ら歴代3社長も同罪で強制起訴されたが、17年に無罪判決が確定した。









