新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言に伴う休業要請を受けて、旅館が休業する神戸市北区の有馬温泉街。収入源を絶たれる中、温泉の購入費が旅館の経営を圧迫している。同温泉街では、公営の泉源を管理する神戸市から温泉を買っている旅館が全体の半数を超える。パイプで送られてくる湯を止めても代金は発生し、関係者らは「休業中だけでいいので無償にしてもらいたい」と訴える。
同温泉では、市が温泉街に点在する7カ所の泉源を管理する。温泉旅館約30館のうち、17館がここから温泉を購入している。泉源管理を所管する市観光企画課によると、代金は1立方メートルあたり350円を基に風呂の規模に応じて算出する。旅館によって異なるが、月20万円以上を支払う旅館もあるという。湯は旅館側で止められるが、使用の有無にかかわらず料金が発生する。
「収益がゼロの状態なので、今後払い続けるとなればかなり苦しい」。市から湯を購入する旅館の男性役員(43)が頭を抱える。緊急事態宣言が発令された直後の7日から営業を休止。すぐに市の泉源から延びるパイプを止めたが、鉄分などの成分を多く含む「金泉」は管内で詰まりやすく、今後のメンテナンス費用も悩みの種という。「温泉の代金だけでも、市に何とかしてもらいたいのが本音」と打ち明けた。
金泉の源泉は90度以上の高温で、一度パイプを止めることで管内が冷え、再び温泉を流すことで、温度差からパイプが壊れる恐れもあるという。休業とともに湯を止めた別の旅館の男性支配人(50)は「営業再開となってもすぐに再スタートできるだろうか」と危惧する。
こうした事態を受け、市も温泉代金の免除を検討している。5月上旬までには方針を決めるといい、担当者は「できる限り旅館のことを考えて検討を進めていきたい」と話した。(西竹唯太朗)
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