新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言が5月末まで延長され、兵庫県内の外出自粛や休業要請も続くことが決まった。「やむを得ない」「もう、もたない」。既に大きな打撃を受ける店主らからはため息と嘆きが漏れ、売り上げが見込めない地場産業や興行の現場でも正念場が続くことになる。(伊田雄馬、中務庸子、金井恒幸)
■売り上げ2割に
神戸・三宮の和食店「智(さと)や」。普段なら大勢の客でにぎわう午後6時ごろでも、カウンターに常連客が1人座っているだけ。一方、店内では経営者の男性(51)ら3人が働いている。
「店を閉めても開けても結局、赤字」と経営者の男性。午前0時だった閉店時間を午後8時に前倒しした上、予約のキャンセルが相次ぎ、4月の売り上げは昨年の8割減まで落ち込んだ。「毎日のように感染者が出ている状況では仕方ない。今は辛抱」と唇をかむ。
立ち飲みもできる山下酒店(神戸市中央区)では、常連客も顔を見せなくなったという。店主(79)は「みんな外出を自粛している証拠。今は経済よりも命が大切」と語った。
■秋冬商戦見えず
地場産業も苦境に立つ。神戸のケミカルシューズ業界は、取引先の百貨店などが臨時休業となり、売り上げが激減した。
「試練やね。さらに1カ月はきついわ」。婦人靴メーカーのサンナイト(神戸市長田区)では、4月の売上高が前年の半分以下に。日本ケミカルシューズ工業組合理事長も務める新井康夫社長(65)は嘆く。現在はサンダルなどを製造するが、納品先の多くが休業しているため多くは店頭に並ばない。同社の工場も追加受注がなく、5月中旬から休業する予定だ。初夏に開かれる秋冬用の展示商談会も中止が決まり、「来季に向けた準備もできず、もどかしい」と話す。
■落語家も裏方も
上方落語の定席「神戸新開地・喜楽館」(同市兵庫区)は県内で感染者が確認された直後の3月3日から昼公演を中止。緊急事態宣言を受け、5月31日までは夜公演を含め全館休館を決めている。3月以降の収入はほぼゼロ。職員の給与支払いなどのため助成金制度の利用も検討している。
収入を絶たれた若手落語家も多い。運営するNPO法人「新開地まちづくりNPO」理事長で同館館長の高四代(たかよんだい)さん(72)は「若手を育てる場にしようと取り組んできたが、その機会が失われ毎日、胸が痛む」と肩を落とす。
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