立夏を過ぎて日差しが強まる中、神戸市東灘区を流れる住吉川では、稚アユが遡上する光景が見られる。落差数十センチのせきにもひるまず、勢いよく跳びはね、ひたすら上流を目指している。
河口近くで卵からふ化したアユは海で冬を過ごし、春から初夏に川をさかのぼる。中上流で成魚に育ち、秋になると産卵のため川を下る。住吉川では、県土木事務所や自然保護団体が協力し、2011年から16年までに12カ所の魚道を整備。千匹程度だった個体数は1万数千匹まで増えた。
せきに到達した稚アユは、10センチ足らずの体長の何倍もある高みに向かって身を投げ出すように跳ぶ。阻まれても何度も挑戦する姿も。日差しで輝く水しぶきの中で、野生の力強さがきらめく。(中西幸大)