客席数100の小劇場、神戸三宮シアター・エートー(神戸市中央区)が、コロナ禍で舞台活動がままならない状況を打開しようと、劇場での催しをインターネットで生配信できるシステムの準備を進めている。兵庫県は緊急事態宣言に基づく休業要請を一部解除し、劇場も対象外になったが、平常通りの再開はしばらく困難だ。軸足は生の舞台に残しながらも、生き残るために知恵を絞る。(溝田幸弘)
同劇場はJR三ノ宮駅から徒歩3分の好立地。2017年のオープン以降、演劇をはじめ落語会、コメディーなど数々のユニークな企画を展開してきた。
しかし4月7日の緊急事態宣言以降、予定していた催しは次々と延期・中止になり、スケジュールは真っ白に。芸術監督の菱田信也さん(54)が作・演出を手がける舞台公演も4月から7月下旬に延期を余儀なくされた。
「3密を避けるために客席の間隔を空け、例えば50席で公演を打っても利益にならない。宣言や自粛要請が解除されても、集客はしばらく難しいだろうし、私たちのような小規模施設は当面厳しい状況が続くのではないか」。菱田さんはため息をつく。
ネット配信の案は4月下旬、スタッフで知恵を絞るうちに浮かんだ。
1台のカメラで延々と中継するのではなく、複数台で次々画面を切り替えられるようにし、臨場感を出せるよう工夫する。菱田さんは「ライブ感を劇場の観客と共有できるようにしたい」と意気込む。
配信映像を有料で購入する人が増えれば、観客が少なくても上演団体の収入につながるという期待もある。「劇場としては、直接足を運んでもらいたいのが第一。とはいえ今のような状況でも楽しんでいただける仕組みをつくりたい」
政府の専門家会議による「新しい生活様式」の提言に、「このままでは業種的にやっていけなくなる」と危機感を覚えた。「コロナ禍がなければここまではしなかった。産業革命のようなものです」
6月以降の運用開始を目指す。
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