「(拉致解決のため)本当によく動いてもらった。一番感謝している」。拉致被害者で神戸市出身の有本恵子さん=失踪当時(23)=の父、有本明弘さん(91)は5日夜、報道陣の取材に応じ、長年にわたり一緒に拉致問題の解決に向け闘ってきた横田滋さんをしのんだ。
滋さんは拉致被害者家族会の初代代表として各地で講演活動などに尽力。兵庫県内でも2003年に神戸市で拉致問題に関する集会に参加したほか、05年には井戸敏三知事を表敬訪問、08年にはたつの市でも講演をした。
拉致解決を訴える運動は「横田さんがいたからこそ、ここまでやってこられた」と明弘さん。5日夜に滋さんの死を知り、「残念。天命と思わないと仕方がない」と唇をかんだ。
滋さんの死去で、拉致被害者の親で健在なのは明弘さんと、滋さんの妻早紀江さん(84)のみになった。今年2月に妻嘉代子さんを亡くしたばかりの明弘さんは「自分も同じ経験をしたが大変。慰め合うしかない」と早紀江さんを気遣った。(那谷享平)