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地域住民が提供した農園で野菜を世話する子どもたち。自然との触れ合いを楽しんでいる=南あわじ市、淡路学園(同園提供)
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地域住民が提供した農園で野菜を世話する子どもたち。自然との触れ合いを楽しんでいる=南あわじ市、淡路学園(同園提供)
卒園生から届いたおもちゃ。出かけにくくても遊べるように、と善意を寄せた=南あわじ市、淡路学園(同園提供)
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卒園生から届いたおもちゃ。出かけにくくても遊べるように、と善意を寄せた=南あわじ市、淡路学園(同園提供)

 新型コロナウイルスの影響で、経済苦や虐待などさまざまな事情を抱える子どもが暮らす児童養護施設が生活リズムを整えようと懸命になっている。兵庫県内の大半の学校は来週から通常授業に戻るが、幸せな育ちを支える「最後の砦(とりで)」は今も不安のただ中にある。コロナ禍の苦境は身寄りや頼る人の少ない卒園生にも及んでいる。(佐藤健介)

 青々と太く育ったキュウリに目を丸くした。

 「キュウリさん、がんばって大きくなったなあ」。児童養護施設「淡路学園」(南あわじ市)で暮らす小学生の男児(10)が満足そうに笑う。

 農園は地域の協力を受け、4月から住民に借りている。「休校期間に自然と触れ合ってほしい」との配慮だ。カボチャやトマトも栽培する。

 同園で暮らすのは幼稚園児や小中高校生ら約40人。“巣ごもり”のストレスからか、おもちゃの取り合いなど、けんかが増えた。

 感染防止で親との面会も制限され、「いつになったら、お母さんに会えるの?」とこぼす子もいた。

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 「児童養護施設は24時間365日体制で、子どもの心身を安定させる場」と柴田崇文施設長(59)は強調する。

 料理やおやつ作りを企画し、少人数のグループごとに空き地で運動する時間も設けた。マンツーマンで学習支援ができるよう、教員免許を持つ指導員が多く常駐できる勤務シフトに工夫した。

 「コロナ社会で生活を安定させるには、地域の協力と職員のマンパワーが欠かせない」と柴田施設長。「悩む子どもに寄り添い、子どもが甘えて職員に抱きつくのも日常。ソーシャルディスタンスなど無理だ」と言い切る。

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 不安は卒園生にも広がる。同園を昨春退所して徳島県の専門学校に通う男性(19)は、アルバイト先の飲食店が営業時間を短縮し、月収が2万円ほど減った。そんな中、外で遊びにくい同園の子どもたちのために卓上ゲームをプレゼントした。

 「僕には身寄りも、頼る人もいない。支援制度が充実すれば、少しは楽になるのだが…」と話す。

■実家頼れぬ退所者生活不安定に 減収見通し3割超

 児童養護施設向けの対策として、国は2020年度第2次補正予算に子ども用マスク購入や消毒経費などを盛り込んだ。

 全国児童養護施設協議会は「児童をケアする時間は大幅に増え、現場の重圧は大きい」として、インターネット教材の購入支援、職員への手当支給などさらなる支援を国に求める。

 施設退所者の生活も不安定化している。NPO法人「ブリッジフォースマイル」(東京都)が4月に実施した調査では、回答した約70人中、3割超が3月と比べて「減収する見通し」と答えた。パートやアルバイトでは7割以上が影響を受けていた。

 国は施設退所者への経済支援として、従来の生活費貸し付け(月額5万円)を3万円積み増したが、第2波の懸念もあり、不安定な生活は続きそうだ。

 同法人は「親の虐待や病気に悩んでいた人には実家というセーフティネットがなく、追い詰められやすい」と懸念する。

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