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SNSの誹謗中傷について、攻撃する側の心理を話す大阪大大学院助教の寺口司さん
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SNSの誹謗中傷について、攻撃する側の心理を話す大阪大大学院助教の寺口司さん

 生前、会員制交流サイト(SNS)上で誹謗(ひぼう)中傷を受けていたプロレスラーの女性の死去を受け、ネット上で他人をおとしめる行為をなくそうと、さまざまな議論が交わされている。他者をたたくという行動にブレーキをかけるにはどうすればいいのか。人の攻撃行動を研究している大阪大大学院助教の寺口司さん(社会心理学)への取材から見えてきたのは、誰もが持っている処罰感情と向き合うことだった。(竹内 章)

 心理学に「第三者罰」と呼ばれる実験がある。Aさんに一定の金額を渡しBさんと分け合ってもらうときに、Aさんが独り占めしたという状況を設定し、利害関係がないCさんに「お金を払えば、その額に応じてAさんのお金を減らすことができる」と伝えると、4~6割もの人がAさんを罰するためにお金を出すことが確認されている。

 「人間には『悪いと思う人を罰したい』という気持ちがあります。自らは被害を受けておらず無関係であるにもかかわらず、コストをかけてでも罰を与えたいと考えます」

 ネットは、より容易に他者を攻撃できてしまう。罰することにはさらに動機があるという。

 「罰を与える人は周囲の信頼を獲得できるという実験結果があります。ここで言う『信頼できる人』とは、『自分をだましたり裏切ったりしない人』という意味です。ある集団の中で良い評判を獲得することが、罰を与える動機になっているのです」

 発信者情報の開示

 ねたみなどの感情と無縁で生きるのは難しい。SNSで人は驚くほど簡単に他人をののしり、言葉の石を投げつけている。

 「約40年前の心理学の研究に『バンデューラの道徳からの選択的離脱モデル』というのがあり、行為▽結果▽被害者-に対する認知がどれか一つでもゆがむと、人は残忍な行為をすることが分かっています。誹謗中傷をSNSで展開する人は『相手のためを思って発言した』『こんな言葉では傷つかないだろう』『中傷される側も悪いよね』などと自分の行為を正当化します。こうした言い訳は認知のゆがみを示しています」

 リテラシーの話を持ち出しても聞く耳持たない人もおり、今回の問題に対し「心理学アプローチだけでは根絶は難しい」(寺口さん)。ただ、誹謗中傷をゼロにするのは難しいが少しでも抑止するため、発信者情報の開示の簡素化、プラットフォームの運営会社による迅速な対応など取り組むべき課題は多いという。

 敵対する集団

 「炎上に参加するのは、ネットユーザーの0・5%ほどとされていますが、通常の対面の人間関係に比べ、ネット人口の母数は桁違いのため、大勢から非難されているように錯覚してしまいます。炎上の当事者になってしまった人がいたら、まず当人を落ち着かせること。不当な攻撃であっても反論を控えた方が無難です。一時的にせよSNSから距離を置くことを勧めます」

 不毛な炎上をなくすため、発信する側として何ができるのか。一般的に政治や宗教、性別などは炎上しやすいテーマとされている。

 「発信の際に『われわれ男性は』『アイドルが好きな人たちは』のように、主語や目的語を大きくして語ってしまうことを避けるべきです。敵対する集団が生じ、『集団を守る』という名目で、炎上を招きやすいからです。第三者罰の実験は、処罰感情から逃れるのが難しいということを示しています。その結果を踏まえると、炎上に参加する0・5%のネットユーザーが増える恐れはあります。SNSを使っている人は感情を動かされても、投稿する前に一呼吸入れること。加害側になってしまうことを絶えず認識し、自分事として考えてほしい」

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