高級中古ギターの請負販売などを手掛けていた「アップルギターズ」(神戸市中央区)が1年前に閉店し、売却を委託した顧客らへの代金が未払いになっていることが、関係者への取材で分かった。破産管財人によると、債権者となる顧客は東北から中国地方まで全国に約130人、未払い額は計約7200万円に上るという。
同店は2019年6月、負債を抱えて営業を停止し、運営会社の「ヘンリー・トラスト」と「アルバート」(いずれも神戸市中央区)は同8月に神戸地裁で破産手続きの開始決定を受けた。破産管財人によると、負債に加えて税金の滞納も多く、返済のめどは立っていない。
顧客の証言では、預けたギターが売却済みにもかかわらず、「売れていない」として金を支払わないまま破産に至っていた。代金を前払いして輸入の新品を注文したところ、商品が届かなかったケースもあった。
姫路市網干区の男性(40)は17年5~7月、年代もので価値が高いとされる2点を、「手取り金額100万円」で託した。再三の問い合わせにも、店は「売れていない」と繰り返し、運営会社が破産。その後、実際は2点とも18年1月までに売れていたことが判明した。
破産管財人が現金出納帳を基に調べたリストによると、倒産までの1年間(18年7月~19年6月)に約40点が、格安で近隣の楽器店に売られたり、質入れされたりしていた。
大阪府豊中市の男性(53)は閉店直前の19年3月、米国の高級輸入ギターに190万円を支払い、商品が届かないまま破産を知らされた。その後の調査で、米国の発注先に送金すらされていなかったと判明した。
ヘンリー・トラストの代理人は神戸新聞社の取材に「破産管財人の調査結果に従いたい」、アルバートの代理人は「個別の事情については破産管財人の調査で明らかにしていただく」とそれぞれ答えた。(井沢泰斗)
