木村一基王位(47)に藤井聡太七段(17)が挑戦する第61期王位戦7番勝負(神戸新聞社主催)が1日、ついに幕を開け、藤井がタイトル奪取に向けて幸先の良いスタートを切った。「最年長」と「最年少」が激突する第1局は愛知県で指され、対局場周辺にはファンが集まり、報道陣も多数詰めかけた。注目度の高さは、藤井がデビューから公式戦29連勝の新記録を達成した3年前に引けを取らない。(溝田幸弘)
藤井は、6月に1日制の棋聖戦5番勝負への挑戦を決め、タイトル挑戦の史上最年少記録を更新。王位戦は二つ目のタイトル戦となる。今期の棋聖戦の対局場は5局中4局が東京、大阪の将棋会館(王位戦前の第1、2局は東京)で、全国の旅館やホテルを転戦し、2日制で対戦するのは王位戦が初めてとなる。
木村は昨年、当時の豊島将之王位をフルセットの末に下し、46歳3カ月の史上最年長で悲願の初タイトルを手にした苦労人。終局直後のインタビューで家族のことを尋ねられ、涙した姿は全国ニュースで中継されて将棋ファンならずとも感動を呼んだ。
そんな2人が意気込みを語った前夜祭は、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点からインターネットを通じて行われた。
第1局の対局場は、愛知県豊橋市のホテルアークリッシュ豊橋の結婚式場。天井が高くて静かな室内は、タイトル戦にふさわしい荘厳な雰囲気を醸した。
振り駒で先手番となった藤井が得意戦法の角換わりを打診し、木村が堂々と受けて立つ。藤井が攻め、木村が受けるという棋風通りの展開に。木村は「間違えたら許さない」という手でプレッシャーをかけるなど高度な戦いが繰り広げられたが、藤井は最後まで攻めを切らせなかった。
記者会見には藤井が登場。激闘の疲れを表情ににじませつつ「1日目は予想以上に激しい展開になり、こちらが攻め込めるかどうか、際どいかと。2日目は途中で少し間違えてしまい、攻めが細くなったところもあった」と振り返った。
長考派で知られるが、8時間という長い持ち時間については「普段の対局以上に深く読むことができたかなと思う一方、形勢判断とのバランスを欠いてしまったようなところもある。そのあたりの反省を次局に生かしたい」と話した。
対局場の外から中をうかがうことはできないが、2日目の昼食休憩時には周辺に将棋ファンと思われる人々の姿が見受けられた。報道陣も番勝負の第1局としては異例の大人数が集まり、新聞だけでなく、テレビのニュースやワイドショーで何度も取り上げられた。
このまま藤井がタイトルを奪うのか、木村が王位の風格を見せるのか。第2局は7月13、14日に札幌市である。例年以上に目の離せないシリーズになった。
 
       
					 2020/7/11 10:30
2020/7/11 10:30

 
											
 
											


 

 
 
 
 





