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神戸大大学院医学研究科教授・曽良一郎さん=神戸市中央区、神戸大大学院医学研究科(撮影・後藤亮平)
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神戸大大学院医学研究科教授・曽良一郎さん=神戸市中央区、神戸大大学院医学研究科(撮影・後藤亮平)
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 新型コロナウイルス感染拡大防止のための小中学校、高校の休校は約3カ月に及んだ。外出も自粛が求められ、子どもたちがインターネットやオンラインゲームに接する時間は長くなり、「ネット・ゲーム依存」が増えることが懸念されている。どのような影響が出ているのだろうか。依存の背景にあるのは? 神戸大学病院(神戸市中央区)で、ネット・ゲームとギャンブル依存の専門外来を担当する精神科専門医、曽良(そら)一郎教授(63)=精神薬理学=は「依存の人の多くが、満たされないものを持っている。生きづらさがあるのです」と語る。(網 麻子)

 -ネット・ゲーム依存とは、どんな病気なのですか。

 「世界保健機関(WHO)は『ゲームの使用をコントロールできない』などの症状が12カ月以上続くことを、『ゲーム障害』の定義としています。いろんな問題が生じます。例えば、学校に行かなくなる、成績が下がる、家庭内の不和が生じる。親がスマートフォンを取り上げると、子どもは親から金を盗んででも、スマホを手に入れようとする。それを繰り返し、親子関係が悪化する。警察を呼ぶケースもあります。それも子どもが、です。よりどころであるゲームができなくなる、虐待されているって言うんですよ。依存になってしまったら、スマホを取り上げることは意味がなくなります」

 -どのくらい使っていると、依存の可能性が高まるのでしょう。

 「週に30時間以上使っている人は、依存の人が多い。1日4~5時間の計算になります。学校に行っていると、平日使える時間すべてで、目いっぱいやっている。気を付けてほしいのは、週30時間以上というのは、あくまでも目安で、それだけで依存というわけではありません。『使用をコントロールできない』など、WHOの定義のような症状が長期間続けば『ゲーム障害』と言えます」

 -新型コロナによる休校で、新たな患者が出ているのでしょうか。

 「外来で診察したケースで言えば、A君は休校中、スマホでオンラインゲームをずっとやっていた。多い日は20時間以上、ほぼ寝ずに。その後、学校が始まったが、きちんと登校できない。親はやめさせようとして、関係が悪くなった。よく聞くと、A君はもともと会員制交流サイト(SNS)などで長時間、スマホを使っていた。一つの典型例です」

 「自粛生活の3カ月で、急に依存になるのではなく、WHOの定義でも12カ月以上とされています。しかし、A君のような人はかなりの数になるでしょう。長期間の休みは、悪化するきっかけになっています。休校中、子どもがゲームをしたり、SNSをしたりする頻度は明らかに増えている。それまで問題なく接していた子も、ゲームに浸っていれば、3カ月で予備軍になってしまう。まして依存に近い状態だったら、自粛生活は決定打になります。患者は恐らく、これからじわじわと増えてくると思います」

 -新型コロナの第2波、3波が生じることが懸念され、再び休校や外出自粛要請の可能性があります。

 「外来で患者の子どもたちに聞いてみると、学校によって休校中の対応が全然違いましたね。オンライン授業は、公立では聞いていないが、私立では早いところは4月ごろから始めたそうです。患者の子どもたちはネット社会に生きていますから、オンライン授業に出たという子は多かった。悪化の抑止になったと思いますよ。第2波、3波に備え、学校は情報通信技術(ICT)教育の準備をして、授業ができる体制を整えてほしい。広い意味でのネット・ゲーム依存の抑止、予防になります」

 -休校や自粛生活になったら、家庭でできることは?

 「依存の子は1日3食、きちんと取りません。昼夜が逆転し、睡眠の質が落ちる。家庭で気を付けてほしいのは、食事、睡眠など、子どもの生活リズムをきちんと整えることです。お風呂はシャワーで済ませるのでなく、湯船につかりましょう。親には料理など、子どもと一緒にできることをしてほしい。ゲーム以外の楽しいことを見つけることです」

 -依存を疑ったとき、神戸大学病院の専門外来ではどのような治療を受けられるのですか。

 「専門外来は2年前に始め、精神科医、臨床心理士、ケースワーカーら約10人のチームで取り組んでいます。家族だけで受診される方もいます。まず心理テストや精密検査などを受けてもらい、他の病気がないか調べます。昼夜逆転を戻すためなどで、薬を出すことがあります」

 「ただ、依存そのものを治す薬はないのです。最終目標は、ネット・ゲームの使用をコントロールできること。1日1~2時間にして、それ以外のものを楽しんでもらうことです。治療は一定のプログラムで進めるのではなく、地道にやるしかありません。患者の行動をどう変えてもらうか。基本の一つは責めないこと。そして、褒めてあげること。ライトノベルを読むようになるなど、ゲームの時間が少しでも減ったら評価します」

 -なぜ、依存になってしまうのでしょうか。

 「依存の人の多くが満たされないものを持っている。家庭や学校や社会で苦しい、うまくいかない、勉強についていけない。ゲームは比較的楽しみが得られやすい。生きづらさがあるからのめりこんでしまう。ほかに楽しいことはいろいろありますよね。例えば異性と付き合うこと。でも、苦しさも伴います。依存の人は楽しみを得るためのエネルギーがなくなっている。好きな趣味や部活動があると、依存になりません」

 「周りの人は分かっていないのですが、依存の人はネット・ゲームで休んでいるところがあるんですね。逃避しているとはっきり言う人もいる。現実に立ち向かう力を取り戻さなければならない。その力が付いたら、ゲームから離れてみようと思える。ゲームをする時間が多少減るんですよ。私たちは時間をかけて、本人がきっかけをつかむまでずっと寄り添うことを大事にしています。ネット・ゲーム依存は本人の自己責任でなくて、心の病気です。そのことを多くの人に知ってほしい」

【そら・いちろう】1957年徳島市生まれ。岡山大大学院医学研究科修了。東北大大学院医学研究科教授、厚生労働省依存性薬物検討会委員などを経て、2013年4月から神戸大大学院医学研究科精神医学分野教授。

<ひとこと>

 神戸大学病院の専門外来は、家族だけでも受診できる。かかりつけ医の紹介状がなければ追加負担が生じるが、紹介状なしで受診するケースも結構ある。ほかに、兵庫県や神戸市の精神保健福祉センターでも相談を受け付けている。

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