夏祭りの花火見物に訪れた子どもら11人が死亡した明石歩道橋事故は21日、発生から19年となった。同日夜、現場の朝霧歩道橋(兵庫県明石市大蔵海岸通1)にある慰霊碑「想の像」の前では、遺族や市民らが犠牲者の冥福を祈った。
事故で次男の智仁ちゃん=当時(2)=を亡くした神戸市垂水区の下村誠治さん(62)は、昼間も市の新人職員向け研修で慰霊碑を訪れていた。「この場に立つと当日の記憶がよみがえり、とてもつらい。その思いはこの19年間、全く変わっていない」と語った。
「大人として、親として守ってあげられず、謝ることしかできない」と癒えることのない悲しみを明かし、「それをエネルギーに遺族が声を上げ、伝えていく。その役目をこれからも担っていくことを誓い、手を合わせた」と述べた。
長女の千晴さん=当時(9)=と長男の大君=同(7)=が犠牲になった有馬正春さん(61)、友起子さん(50)夫妻=明石市=は慰霊碑に花を供えた。正春さんは「安全と思って歩道橋の手すりの中に子どもを入れた時の笑っていた表情を思い出す。次女は高2、次男は中2になったが、上の子は9歳と7歳のまま。不思議な感じがする」と話した。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、例年に比べて訪れる人はまばらだった。毎年行われてきた市民有志による鎮魂歌の合唱は中止となった。(長沢伸一、小西隆久)
【明石歩道橋事故】 2001年7月21日夜、明石市の花火大会会場とJR朝霧駅を結ぶ歩道橋で見物客が倒れ、11人が死亡、247人が負傷した。県警明石署、警備会社、明石市の担当者ら計5人が業務上過失致死傷の罪で有罪判決を受けた。