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新型コロナウイルスの風評被害や横野浩一さんの闘病生活について語る長女伏谷由佳さん(左)と妻の横野典子さん=神戸市須磨区(撮影・中西大二)
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新型コロナウイルスの風評被害や横野浩一さんの闘病生活について語る長女伏谷由佳さん(左)と妻の横野典子さん=神戸市須磨区(撮影・中西大二)
横野浩一さん(遺族提供)
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横野浩一さん(遺族提供)
孫を抱く横野浩一さん(遺族提供)
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孫を抱く横野浩一さん(遺族提供)
横野さんがラインで家族に伝えた最後の言葉(白の部分)
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横野さんがラインで家族に伝えた最後の言葉(白の部分)
横野浩一さんの病室で流されたCD(遺族提供)
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横野浩一さんの病室で流されたCD(遺族提供)

 新型コロナウイルス感染症によって4月に亡くなり、公務災害に認定された北播磨総合医療センター前病院長の横野浩一さん=当時(72)、神戸市須磨区。遺族は、横野さんが同感染症を持ち込んで病院を休診させた-とする風評被害や罪悪感に苦しんだという。妻典子さん(65)と長女の伏谷由佳さん(36)=大阪府=に現在の思いを聞いた。

-風評被害を受けた。 

 長女「70代医師と匿名で報道されたが、父だと推測できたので、知らない人からや無言の電話が鳴り続けた。電車(実際は車)で病院へ行ったとされ、インターネット上では、ウイルスをばらまく殺人鬼などと書き込まれた。風俗やパチンコでもらったと言う人も。院長が病院にウイルスを持ち込んで業務を停止させるなんてお粗末とも言われた」

 妻「ネット上に実名をさらされ、当時は感染するだけで犯罪者のように扱われた。近所の人もみな知っており、(濃厚接触者として)自宅待機の2週間が過ぎた後も外を歩くのが怖く、買い物は車で遠くに出掛けた」

-公務災害が認められた。

 長女「当初は父が感染症を病院に持ち込んだとされ風評被害も受けた。仕事中に感染したことが認められて安堵(あんど)している」

 妻「北播磨地域で頑張ってきた夫のことを、院長で医者のくせにウイルスを持ち込んでとんでもないと思われているのがつらく、夫も残念だと思うので、事実は違うと知ってもらいたかった」

-入院中のやりとりは?

 長女「3月9日に入院し、翌日、急に容体が悪化して人工呼吸器をつけた。鎮静剤を入れるので意識がなくなる。万一を考えてLINE(ライン)で『大好きだよ、ありがとう』と伝えた。父も『心から愛しています。ほんとうに幸せだよ』と書いてくれた。家族はほとんど話していないし、まさか亡くなるとは思っていなかった」

 妻「私も、しばらく入院して帰ってくるとのんきに考えていた。主治医から話しますかと言われ、夫が『念のためありがとうな』と言ったので、私も『念のためありがとうね』と。それが最後の言葉になった」

 長女「当時、コロナが一気に悪化するとは知らなかった。陽性の判明も父は知らない。多分そうだとは思っていただろうが、新型コロナとは知らずに逝った」

-闘病中の様子は。  

 長女「医師からは『人工呼吸器でサポートし、自分の力で治るのを待つ』と言われたが、呼吸状態が悪くなり、わらをもつかむ思いで頼み、入院10日後にアビガンを使ってもらった。人工心肺装置エクモは人工呼吸器を装着して1週間たつと救命率が低くなるので使えないと言われた。もやもやした気持ちが残った。4月に入って回復の見込みが低くなった。たくさんのチューブにつながれ、父ならきっと楽にしてほしいと思うと考え、血圧を上げる薬をやめた。30分ほどで亡くなったが、父を囲み家族でゆっくり過ごす時間が取れた」

-お別れは。     

 長女「納体袋に入れられて親族6人で通夜と葬儀をした。お骨拾いも、長男がのど仏だけを拾った。最後はジャケットにシャツ、ネクタイ姿で格好よくなった。ただ、人工呼吸器を入れていたので口は開いたまま。普段は葬儀社が整えてくれるが今回は袋に入っていて触れることすらできなかった」

-家族を亡くした立場から伝えたいことは。

 長女「特に高齢の方は亡くなるリスクを考えて行動してほしい。若い方も緩まず感染対策を。自分の親や祖父母にうつして、いつこういう立場になるか分からない。私たちのような思いをしてほしくない」(聞き手・小西博美)

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