地方議会が住民から意見や要望を受ける「請願」「陳情」について、兵庫県と県内41市町の議会のうち約8割に当たる35議会が、委員会などの場で、提出者から直接意見を聴く機会を設けていることが神戸新聞社の調べで分かった。近年、政務活動費の不正などで地方議会に厳しい視線が注がれる中、請願・陳情を文書で受理するだけでなく、きめ細かく民意を吸い上げる取り組みとして広がりつつある。
請願・陳情の制度は、住民の意見や要望を行政に反映させる手段として、どの地方議会にもある。10年ほど前から、議会基本条例を制定する動きが各地で広がったのに伴い、同条例に「請願・陳情を住民の政策提案として受け止める」との条文を盛り込むケースも増えている。
県内の全42議会のうち35議会では、請願・陳情者(どちらか一方のみのケースを含む)が希望した場合、委員会などで直接、提出者から趣旨や意見を聴く時間を設けている。かつては審議の合間の休憩時間に聞き取りをしていたのを、委員会に移した議会もある。
これに対し、県や伊丹、たつの市、猪名川、神河、市川、新温泉町の7議会は、請願・陳情者から意見を聴く機会を設けていない。
一方、どちらも民意を届ける役割の請願と陳情だが、扱いには違いがある。請願は憲法に定められた国民の権利で、委員会で審査されるが、提出には議員の紹介が必要。片や、法的な定めがない陳情は紹介議員がいなくても提出可能だが、議員に配布するだけで審査対象としない議会も多い。
採択の件数にも差がある。県内42議会が昨年受理した請願は計137件で、うち約45%の61件を採択。採択後は意見書として取りまとめ、国にも制度拡充などを求めるケースが目立つ。陳情は42議会が計508件を受理し、このうち採択は約5%の26件にとどまる。(井関 徹、初鹿野俊)









