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院内感染の調査報告書について質問に答える神戸市立医療センター中央市民病院の木原康樹院長=7日午後、神戸市役所(撮影・辰巳直之)
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院内感染の調査報告書について質問に答える神戸市立医療センター中央市民病院の木原康樹院長=7日午後、神戸市役所(撮影・辰巳直之)
神戸市立医療センター中央市民病院
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神戸市立医療センター中央市民病院

 神戸市立医療センター中央市民病院の新型コロナウイルス院内感染に関する報告書の概要

 ■院内感染の概要

 3月3日に神戸市内で初めて新型コロナウイルス患者が確認されて以降、第1種・第2種感染症指定医療機関として、また兵庫県が指定する「新型コロナウイルス感染症重症等特定病院」として、104人の患者(7月13日時点)を受け入れてきた。そのような中、入院患者1名が4月8日に発熱し、同9日に感染が確認された。この患者は入院当初は非感染だったと推定されたことから、院内での感染が疑われ、調査したところ、入院患者7人と職員29人の計36人の感染が確認された。感染した入院患者のうち3人は死亡した。

 また、感染拡大防止に伴う職員の自宅待機者数は延べ349人となり、救急、外来、手術など病院機能を縮小もしくは停止せざるを得ない期間が発生した。

 ■A病棟の感染経路

 最多の院内感染者が出た感染症病棟(A病棟)では、あるコロナ患者を3月31日に担当した看護師(1)に4月5日、発熱などの症状が出た。看護師(1)はその後無症状となったため、同7日から再び勤務したが、院内感染覚知後のPCR検査で9日、陽性が判明した。

 看護師(1)は看護時、感染予防策として個人防護具を装着していた。しかし同患者が発熱に伴って頭が混乱する「せん妄状態」となり、ベッドから起き上がって徘徊(はいかい)しようとしたり、床に排尿したりといった行動を繰り返す中で、防護に破綻が生じた可能性がある。

 この看護師(1)は発症前の4月4日、コロナではない病気で入院し、「せん妄状態」を呈することが多かった患者1を頻繁に看護していた。患者1は同8日に発熱し、9日に感染確認された。これが院内感染覚知の端緒となった。患者2、4、6、7は看護師(1)が発症前後に担当しており、感染が広がった可能性がある。

 病院業務員(1)と(2)は、患者1のシャワー介助や透析室への搬送時に感染した可能性がある。清掃担当者(1)は患者1の病室の清掃や、「せん妄状態」の患者1に腕をつかまれた際などの感染が考えられる。清掃担当者(2)は、患者1が退院後の病室清掃を行っていた。

 感染した看護師(4)~(11)は、いずれかの時点で患者1および看護師(1)と接する機会があった。一方、看護師(2)と(3)は、看護師(1)と接触機会はなく、患者1と同時期に発症しているため、他のコロナ患者を看護した際に感染した可能性がある。

 看護師(12)は自宅待機中の4月23日に発症しており、A病棟で勤務する中で感染した可能性が高い。A病棟の全看護師が自宅待機になったため他病棟から派遣されてきた看護師(13)は、個人防護具の着脱に不慣れな勤務開始時期に感染した可能性がある。病院業務員(3)は、汚物処理室内に残存していたウイルスに暴露したことが考えられる。

 ■感染拡大の原因

 A病棟は軽症コロナ患者の受け入れ病棟であり、患者対応の際には、各種ガイドラインに基づいてサージカルマスクを装着し、せき症状が強い場合のみ気密性が高いN95マスクを使用していた。しかし、容体によってはサージカルマスクでは完全に感染防護を行うことができなかった可能性がある。振り返れば、患者の容体によりマスクを使い分けるのが難しい場合は、一律にN95マスクを使うことが感染管理上は安全だったと考えることができるが、当時市場での流通量は著しく不足しており、物品を中期的な視点で使用する必要があった。また、院内感染の覚知以前は、コロナ患者も含め、患者はマスクを着用していなかった。

 一方、個人防護具を装着しながら対応する中で感染した事例もあり、さまざまな病棟職員の、感染防護に関するレベルが一律ではなかったことが考えられる。また、当初は症状が出た場合の職員の自宅待機に関する取り決めが十分整備されていなかったため、発熱症状が出てもその後無症状になったことから再び勤務していたケースもあった。

 A病棟は、感染症病床10床と一般病床35床を備える。当初はコロナの軽症患者を感染症病床で、非感染者を一般病床で受け入れ、個室ごとにゾーニング(領域分け)を行うことで感染管理を実施していた。しかし、コロナ患者の看護職員と非感染患者の看護職員が接触する機会があった。

 院内感染の発端となったと考えられる患者が入院した3月31日時点では、重症患者を受け入れる病棟の空きがわずかだったため、容体が悪くなることが予測されながらも軽症者用のA病棟に入れた。空床確保を目的として増悪傾向にある患者をA病棟に入院させたことが、院内感染の素地(そじ)を作った可能性がある。

 また、ほかの基礎疾患を有するコロナ患者に対応する場合は、通常の看護師配置だけでは体制が十分ではなく、相当数の医療従事者を投入する必要があった。

 ■覚知後の改善策

 1月31日に新型コロナウイルス感染症対策本部を設置して以降、患者の発生状況や入院状況などに応じて全所属長などで構成する本部会議を開催していたが、院内感染覚知後の4月16日に、病院中央部に位置する特別会議室を対策本部として常設設置した。これにより、入院患者の状況や院内感染の発生状況、PCR検査の進ちょく状況などの情報が集約された。

 病棟ごとコロナウイルス患者専用エリアとし、感染患者、疑い患者、非感染患者、それぞれに対応する医療従事者を区分した。また、陽性と診断された患者や職員との接触により感染リスクのある職員は、幅広く自宅待機の対象とした。感染を疑う症状が出た場合には、いかに軽微なものであっても自宅待機にするよう取り決めた。コロナ患者の診療にあたった医師や看護師が、非感染患者の診療に戻る際は、自宅待機期間を挟むこととした。患者の申し送りなども、方法や場所を工夫して「密」にならないよう注意喚起。患者にもマスクを装着した。

 全身麻酔手術や化学療法などを行う入院患者については、5月7日より手術前や入院前にPCR検査を実施。コロナ患者が入院する病棟にタブレットを配布し、医師や看護師と患者が会話できる遠隔コミュニケーションツールを導入した。患者と家族のコミュニケーションのため、会員制交流サイト(SNS)のビデオ電話機能を活用している。

 ■まとめ

 院内感染の原因究明はあくまでも推測の域を出ない。しかし、発症者の時間経過や職員の行動履歴なども丹念にヒアリングすることで、個人の防護技術だけに帰すことのできない構造的な問題も見えてきた。

 A病棟は、多数の非感染患者を常時受け入れる必要があったため、完全な感染症専用病棟として運用していなかった。また、当院の入院患者は透析や人工呼吸器などが必要な介護度および重症度の高い患者が多いため、さまざまな職種の医療従事者が濃厚に関わる必要があった。そして、それらの患者がほかの病棟や他病院に容易に移れない点も浮かび上がった。

 コロナは感染力が極めて強く、患者と疑い患者、および非感染患者を分離し、さらに医療者も厳格に分離しなければ院内感染を確実に防ぐことはできない。しかし、現在の病院建屋で実現することは構造的にも人員的にもほぼ不可能だ。次の流行期に備えた最良の方策は、コロナ患者専門の病棟を構造的に分離し、新たに建設することだ。

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