新型コロナウイルスの感染拡大で全国戦没者追悼式が縮小され、兵庫県内の遺族らは15日、自宅や墓前などで鎮魂の祈りをささげた。式には兵庫県から例年100人前後が参列していたが、今年は初めて参加を見送った。遺族の高齢化が進む中、無念の思いが広がる。
県遺族会は毎年参加者を募集しており、今年は65人が希望していた。だが、感染症対策として国が各都道府県で最大20人に限定。その後も感染が広まったため、県内からの参加をキャンセルした。
5年ぶりに式に参加する予定だった女性(80)=神戸市垂水区=は、自宅で家族と黙とうした。
5歳の時、父=当時(33)=をビルマ(現ミャンマー)で亡くした。記憶はほとんどないが、幼い女性のために戦地でランドセルを用意してくれたという。母からは「しっかり者で優しかった」と聞かされてきた。
10年前には供養のため、妹とミャンマーを訪問。「遠く離れた暑いジャングルで、母や幼い私たちを思いながら亡くなったと思うと無念だった。改めて平和の大切さを感じた」と話す。追悼式について「来年は行けるか分からないけど、仕方ない」と残念がった。
男性(52)=姫路市=の祖父はフィリピンのルソン島で戦死した。6年前から父に連れられ護国神社(同市)の慰霊祭に参加し、祖父や戦争について深く知るように。今年1月にはルソン島を訪れ、「もっと祖父や当時のことを知り、平和の大切さを伝えたい」と考えた。
不参加になった追悼式について「戦争を知らない私のような世代が参加することで、記憶の継承に役立つと思っていた」と残念がった。(末永陽子、前川茂之)