兵庫県立東播磨高校(稲美町)演劇部が2017年の「第63回全国高校演劇大会」で上演し、最優秀賞に輝いた演劇作品「アルプススタンドのはしの方」が映画化された。高校生活の中で挫折を経験した生徒4人が、野球部の応援を通してちょっと前向きになる青春ストーリー。多くの共感を呼び、全国の映画館約90館で上映される人気作品となっている。原作者で同校演劇部の顧問だった籔博晶教諭(31)は「見終わった後、勇気が湧いてくる作品」と話す。(門田晋一)
物語は、夏の高校野球全国大会が開かれている甲子園球場(西宮市)が舞台。悩みや苦しみを抱える演劇部員や元野球部員、部活動をしていない「帰宅部」の男女計4人を中心に話が進み、観客席の端で試合を見ながら揺れ動く心情や成長を描く。100本以上の映画を手掛けた城定秀夫監督がメガホンを取った。
原作を書いた籔教諭は、現在は県立東播工業高校(加古川市)に勤務する。16年春に自身の母校、県立長田高校(神戸市長田区)が選抜高校野球大会に21世紀枠で初出場した際、同球場を訪れた経験からヒントを得た。
「どんな思いで応援しているんだろう」。晴れ舞台に立つ球児に、声援を送る後輩たちを見て思った。野球部を辞めていたり、嫌々訪れていたりと、いろんな立場の生徒がいるかもしれないと想像が膨らんだ。自身も中学のサッカー部時代にレギュラーの座をつかめず、ベンチを温める日々だった。そんな青春時代のもどかしさを演劇にできないかと考え、16年8月に台本を完成させた。
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17年の全国高校演劇大会では、若者の繊細な心理表現と部員の熱演が高評価を得て、最優秀賞を獲得。大会の様子はNHKで放送された。籔教諭の大学時代の友人で、テレビを見たプロの脚本家奥村徹也さんが完成度の高さに注目。作品を紹介された映画配給会社社長の直井卓俊(たかとし)さん(43)は「甲子園でプレーする人より、観戦する人の方が圧倒的に多い。たくさんの人に共感してもらえる」と城定監督に映画化を提案し、奥村さんの脚本で実現した。
東播磨高演劇部の元副部長で、大会時に出演した大学3年大西史華(ふみか)さん(21)は「映画版では、自分の可能性を狭めてはいけないという物語のメッセージが強くなった」。籔教諭は「映画を通じ、新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ気持ちが少しでも軽くなればうれしい」と語っている。
■映画「アルプススタンドのはしの方」
演劇は昨年東京の劇場でリメーク上演され、その際の出演者らが映画にも出演。テレビドラマ「中学聖日記」などで注目を集めた小野莉奈さんら、実力派の若手俳優がそろう。上映時間は75分。7月に劇場公開され、兵庫県内では現在、イオンシネマ加古川(加古川市)で上映中。9月4日には塚口サンサン劇場(尼崎市)でも公開される。17日まで。
 
       
					 2020/8/22 15:30
2020/8/22 15:30

 
											
 
											 
											 
											 
											


 

 
 
 
 





