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 最近、「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」という言葉をよく耳にする。場の空気を読みすぎて疲れ切ってしまう人たち、感受性が強く人付き合いが苦手な人たちをいい、人気お笑い芸人たちの告白で注目されるようになった。4~5人に1人が該当すると聞けば、自分もそうなのかと思わないでもない。ネット上には自己診断できるサイトもある。まずはしっかり知ることからと思い、カウンセリングに取り組む関西大学の串崎真志教授(50)=臨床心理学=を訪ねた。(中部 剛)

■まず、HSPとはどういう人を言うのか、教えてください。

 「他人の気持ちが気になる人って、いますよね。そうした繊細さと、音や光、においといった感覚の敏感さの両方を持ち合わせた人を『HSP』と呼びます。1990年代、アメリカの心理学者エレイン・アーロン氏が指摘しました。日本では、これまで集団になじみにくい人たちは随分辛抱してきましたが、つらい、しんどいと言えるような時代になってきました。会員制交流サイト(SNS)の影響が大きいですね。弱音を吐いてもいい場所ができたわけです。ここ1年くらいでいうと、芸能人が公表していることも影響しています。海外では、脳の研究からHSPが裏付けられて研究が増えており、日本の学術レベルでも注目されています」

■繊細過ぎる人、ですか。具体的に言うと?

 「気疲れ、人疲れしてしまう人たちです。パーティーなどで楽しく食事をしても、後でぐったりしてしまう。日本では幼い頃から、学校や会社など集団や組織に上手に適応することが求められます。周囲の顔色をうかがい過ぎて、人の言動を必要以上に気にして傷つきやすかったり、気持ちが不安定になったり。これまでの心理学で言うなら神経症傾向です。ただ、病気ではないので治療は必要ありません。人の性格や気質ですね。HSPは人口に対し、20~25%ぐらい存在するとされています」

■音などに敏感というのは、どの程度ですか。

 「人によってさまざまなんですけど、例えばゲームセンターの音や光が苦手だったり、映画館の音量がうるさいと感じたりします。家でもテレビの音は小さい方がいいとか、時計の秒針の動く音が気になって仕方がないとか。皮膚、音、光、におい、あるいは身体感覚。いろいろありますが、一つでも二つでも当てはまれば、敏感な感覚を持っている可能性はあります」

■HSPかどうかの基準はあるのですか。

 「インターネットで検索すると、さまざまなチェックリストが出てきますが、明確な基準はありません。仮に当てはまったとしてもカウンセリングを受けたり、病院に行ったりする必要はありません。左利きのようなものでしょうか。左利きでも不自由なく生活している人はたくさんいますが、中には左利きを思い悩んでいる人もいるかもしれない。私はよく建物を例にします。1階部分がHSP気質です。人によって2、3階部分に不安症、不登校、抑うつ症状が乗ってくる。そうなると、医学的処置やカウンセリングといった対応が必要となるケースが生じます。逆に言うと、こうした症状の背景にはHSP気質があるということです。そして壁にぶつかったり、人間関係がこじれたりして不安症などを発症していく。頭痛や胃腸が弱いなど、心身症を抱える人もいます」

■コロナウイルスの感染拡大で気持ちが沈んでいる人が増えています。HSPの人が心配になります。

 「しんどいと言っている人はいますね。緊急事態宣言が解除されたときはポジティブな方向を向いていましたが、感染拡大の最中は、終わりのないような暗いニュースがずっと流れていましたから、目にするたびに気持ちがふさぎ込んでしまう。HSPの人から相談を受けたら、ニュースを見るのは最小限でいいと伝えます。逼迫(ひっぱく)した社会の現状を深く受け止めてしまう。特徴の一つです」

 「心理学では、気持ちが人から人へと伝わる現象を『情動伝染』と呼びます。これは一方の感じ方ではなく、相互のメカニズムがあるようです。心臓の鼓動、脳波、皮膚の温度など生理的な活動が、目の前の人と同期する現象が確認されています。不思議ですね」

■学校や会社で生きづらさを感じるとき、どう対処すればいいのですか。

 「会社で嫌なことがあったとします。その嫌な空気を持って帰らず、会社に置いて帰るイメージをトレーニングしたらどうでしょう。少し気持ちが楽になると思いますよ。デンマークの心理学者は、見えないスクリーンで自分を守るというイメージ練習を勧めています。まず、自分の体の中心にパワーを集める▼そのパワーで全身の表面を覆う▼そのパワーで体の前に盾をつくり、自分がしっかりと守られていることを感じる-というものです。私は気持ちのバリアーと呼んでいます」

 「このほか、同じような感じ方をする人たちとつながり、語り合うことも大切ですね。各地にHSPの交流会があり、インターネットで検索するといくつも出てきます。悩みを打ち明け合うことで、ほっとできます。日常生活の上では、ダウンタイムといって、1人でぼーっとして生活の疲れをとる時間も必要です。散歩をしたり、自然と触れ合ったりするのもいいと思います」

■多感というのは悪いことばかりではありませんよね。

 「他人にはない感性ですから、どう生かしていくかが大切です。多感の利点は三つ。『物事を深く受け止める』『共感性が高い』『直感力が高い』。他の人には感じられないような深読みができ、子どもだと空想力がたけている。気持ちの揺れをある程度コントロールできるようになったら、むしろ繊細さを磨くようお勧めします」

 「感受性が豊かな人は作家、音楽家、画家などの芸術家タイプ。人の気落ちを察し、共感し、優しい気持ちを持っている人なら看護師、介護士、カウンセラー、教師などの仕事が向いています。HSPをどう生かすか。否定的に捉えるのではなく、『繊細でよかった』と思ってもらえれば、うれしいですね」

【くしざき・まさし】1970年山口県生まれ。大阪大大学院人間科学研究科博士後期課程修了。NPO法人「寺子屋ひゅっげ」(大阪市)で支援を続ける。著書に「繊細すぎてしんどいあなたへ-HSP相談室」など。

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