7月に九州地方を襲った豪雨災害は、新型コロナウイルス感染が拡大する中での避難所運営という新たな課題を自治体に突き付けた。神戸市は8月中旬までの約1カ月にわたり、熊本県八代市に職員計42人を派遣し、避難所運営を支援した。第1陣でリーダーを務めた市危機管理室の谷敏行係長(40)に、防災の日(9月1日)に合わせ、現地で感じた課題などを聞いた。(長谷部崇)
八代市では豪雨で4人が死亡、1人が行方不明となり、522軒の建物が全壊した(いずれも8月24日時点)。市内2カ所に避難所が開設され、神戸市の派遣隊は、最大で153世帯269人が避難した八代市総合体育館を支援した。
八代市は6月にコロナ対応の避難所マニュアルを策定。1人当たりの十分な広さの確保などを定めていた。支援物資でカーテン式の間仕切り(高さ約2メートル)を設け、体温やマスク着用をチェックできるサーモモニターも設置した。
それでも想定外の問題が相次いだ。注意が必要だったのが、さまざまな種類が届く消毒液の管理。ノロウイルスなどの消毒に使う次亜塩素酸ナトリウム液が、手指の消毒用として体育館に置かれたこともあったという。そこで薬剤師資格を持つ神戸市の職員が「アルコール60%以上なら手指のコロナ対策に効果がある」「高濃度の消毒液は手荒れの可能性もあるので、テーブルやベンチの清掃に使用してください」などの説明書を作り掲示した。
避難者の平均年齢は60代後半。当初はベンチで顔を寄せて雑談する高齢者もいた。間隔を空けるようテープで目印を付け、注意喚起を続けるうちに「神戸の人が言うなら」とソーシャルディスタンスを守ってくれるようになったという。
7月13日には熊本県に派遣されていた高松市職員のコロナ感染が判明。後に八代市でも初の感染者が出ると、避難所の雰囲気は一気に変わった。谷係長は「災害も感染症も、人ごと意識が一番危ないと実感した」と振り返る。
また、支援した同体育館は体調不良の人が過ごすスペースの分離が不十分で、トイレも一般用と分けられていなかった。神戸市や兵庫県は新型コロナを受けた避難所運営のガイドラインで、体調不良の人は動線を分けると定めているが、谷係長は「避難所の開設後に分離するのは難しい。あらかじめ避難所ごとにレイアウトを考えておくべきだ」と話す。
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