有人飛行する「空飛ぶクルマ」の開発で、大手メーカーの技術者が設立した神戸のベンチャー企業と、航空機部品を手掛ける中小製造業者のグループが手を組んだ。時速400キロで2時間以上飛ぶ垂直離着陸機を、2025年までに形にする計画。壮大な挑戦に、地元のものづくり技術を注ぎ込む。(長尾亮太)
ベンチャーは19年設立のスカイリンクテクノロジーズ(神戸市西区、資本金1300万円)。輸送機器メーカーに勤める森本高広さん(41)=兵庫県明石市=が社長を務める。経済産業省の航空機製造事業許可を受け、自動車メーカーの技術者や航空会社のパイロットら約40人の有志が関わる。
中小企業のグループは、14年に発足した神戸エアロネットワーク(KAN)。参加22社はそれぞれ、金属の旋盤加工や表面処理、材料試験などの強みを持つ。航空機部品の品質基準は厳しく、製造の課題を克服するため情報交換している。
KANは昨年12月、勉強会に森本社長を招いた。地元のベンチャーがSF映画の世界を実現するような計画を進めていることに、経営者らは驚いた。「夢の実現に向けて力になりたい」と共感が広がった。
両者はこのほど、共同開発の連携協定を結んだ。エンジンはガスタービン式を採用し、金属加工の伊福精密(神戸市西区)が、金属3Dプリンターで部品を試作する。精密加工や熱処理で強度を高める技術を生かし、エンジンの小型化を目指すという。
産業用の電気機器を手掛ける阪神機器(同)は、機体の制御に欠かせない電子回路基板の製作を担う。他にも、空気抵抗などの試験に使うミニチュア機体の製作や、飛行性能のコンピューター解析を予定する。
空飛ぶクルマは、国内外のベンチャーや大手航空機メーカーなどが競って開発を進める。40年までに世界で約160兆円規模の関連市場が生まれるとする米金融機関の試算もある。
東日本大震災で、道路が寸断されても移動できる手段の必要性を感じたという森本社長は「出張や旅行に行けるエリアも一気に広がる」と展望を語る。開発する機体は、スマートフォンの操作一つで迎えに来る自動運転機能を備えた設計にする。
共同開発で「さまざまな課題に一緒に取り組み、未来をつくりたい」と森本社長。KANの酒井誠会長(42)=和田金型工業社長=は「私たちにとっても、さらに技術を高める好機」と意気込む。
 
       
					 2020/9/11 14:30
2020/9/11 14:30

 
											
 
											


 

 
 
 
 





