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会議アプリZoomで取材に応じる黒沢清監督
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会議アプリZoomで取材に応じる黒沢清監督
「スパイの妻」の一場面©2020 NHK,NEP,Incline,C&I
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「スパイの妻」の一場面©2020 NHK,NEP,Incline,C&I

 「時代ものを一度はやってみたかったので、新鮮だった」。8月末、取材に応じた黒沢清監督はこう振り返った。

 第77回ベネチア国際映画祭で見事、銀獅子賞(監督賞)に輝いた「スパイの妻」は、日中戦争の時代に満州で行われていた日本軍の犯罪行為を告発しようとする実業家と妻の物語。神戸市出身の黒沢監督が初めて地元を舞台に、主要場面のロケが市内各所で行われた。

 良心とは、正義とは何か。そして夫婦の愛とは…。人間の尊厳にかかわるテーマが展開される。

 「その後の日本が、世界がどこに向かうのか、我々は知っている。そうした歴史にどう接するのか、良識が問われる。気の抜けない撮影だった」。時代の波にほんろうされる夫婦の人生を、丁寧な心情表現と、細部にまで気を配った場面作りの積み重ねで描き切った。今回の受賞は、そうした制作姿勢も評価されたのだろう。

 1950~60年代、日本人監督のいくつかの作品が金獅子、銀獅子賞のいずれかを受けた。多くは、黒沢明監督の「羅生門」「七人の侍」、溝口健二監督「山椒大夫」「雨月物語」といった時代劇だった。男優賞の三船敏郎も黒沢明の時代劇に主演した。ヨーロッパの映画人らが西洋中心主義を反省し、異文化にも価値を見いだそうとした時代だった。

 そして北野武監督の「HANA-BI」(97年)。「世界のキタノ」と称されるきっかけになった受賞作は、静ひつな映像の中に激しい暴力があり、西洋から見ればどこか理解不能な異色作だった。同じく北野監督の銀獅子賞を受けた「座頭市」(2003年)も様式美とバイオレンスが入り混じった時代劇だった。

 しかし、今回の「スパイの妻」にはそうした異質な部分がない。欧米と同じ価値観に立った上での評価だった。黒沢清監督は日本映画の普遍的な力を世界に知らしめたと言えよう。

 もう一人の「世界のクロサワ」が神戸から生まれたことを心から祝福し、喜びたい。(片岡達美)

【黒沢清監督の主な作品】

1983年 神田川淫乱戦争

  85年 ドレミファ娘の血は騒ぐ

  89年 スウィートホーム

  92年 地獄の警備員

  97年 CURE キュア

  99年 ニンゲン合格

2000年 カリスマ

      大いなる幻影 Barren Illusion

  01年 回路

  03年 アカルイミライ

      ドッペルゲンガー

  06年 LOFT ロフト

  07年 叫

  08年 トウキョウソナタ

  13年 リアル~完全なる首長竜の日~

  14年 Seventh Code セブンスコード

  15年 岸辺の旅

  16年 クリーピー 偽りの隣人

      ダゲレオタイプの女

  17年 散歩する侵略者

      予兆 散歩する侵略者 劇場版

  19年 旅のおわり世界のはじまり

【ベネチア国際映画祭で主要賞を受賞した主な日本映画、日本人】

1951年 金獅子賞 「羅生門」   黒沢明監督

  53年 銀獅子賞 「雨月物語」  溝口健二監督

  54年 銀獅子賞 「七人の侍」  黒沢明監督

           「山椒大夫」  溝口健二監督

  58年 金獅子賞 「無法松の一生」稲垣浩監督

  61年 男優賞  三船敏郎    黒沢明監督「用心棒」

  65年 男優賞  三船敏郎    黒沢明監督「赤ひげ」

  89年 銀獅子賞 「千利休 本覚坊遺文」 熊井啓監督

  97年 金獅子賞 「HANA-BI」 北野武監督

2003年 銀獅子賞 「座頭市」   北野武監督 

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