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殺害現場の民家=2019年10月8日、神戸市須磨区
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殺害現場の民家=2019年10月8日、神戸市須磨区
神戸新聞NEXT
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 自宅で介護中の祖母を殺害したとして、殺人罪に問われた神戸市須磨区の元幼稚園教諭の女(22)の裁判員裁判の判決が18日、神戸地裁であり、飯島健太郎裁判長は懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役4年)を言い渡した。介護と仕事の両立に心身をすり減らし、SOSは周囲に届かない-。裁判を通して見えたのは、若年世代による認知症介護の過酷さだった。被告の女は法廷で、介護で蓄積したストレスや心境の変化を詳細に語った。

 幼少期に両親が離婚し、小学1年で母が病死した被告。児童養護施設に入所後、祖父母に引き取られた。中学2年からは叔母の家族と暮らしていた。

 短大を卒業後、2019年春からは夢だった幼稚園教諭として働き始める。同時期、1人暮らしだった祖母の認知症が悪化した。

 「叔母さんは子どもがいる。家庭がある。父は病気。伯父さんは忙しい。昔からお世話になっていたし、私しかいない」。当時の被告はそう考えた。

 19年5月に同居を始めた。祖母は平日昼間はデイサービスに通い、平日の夕食の用意や通院の付き添いは叔母が担っていたという。平日夜と週末の介護は被告が1人でこなした。

 帰宅後、慣れない仕事で持ち帰った作業をしながら介護に追われる。祖母は認知症の影響で「お金を取ったやろ」「泥棒」と暴れることも。トイレの介助は約1時間おき。徘徊(はいかい)に付いて、1時間ほど歩いたこともあった。

 「想像以上に大変だった。睡眠は1日に2時間程度。寝ているのか、起きているのか、分からない状態だった」と被告。叔母に相談したが「認知症やから」などと返された。叔母は高齢者施設の入所に否定的だったといい、被告は「我慢するしかないのかなと思った」と振り返った。

    ◆   ◆

 事件が起きたのは19年10月8日。前夜、被告は自殺未遂を起こしている。

 「明日からまた介護と仕事なのか、と思って」

 翌朝、「体を拭いて」という祖母の声で目覚めた。お湯でぬらしたタオルで拭いていると、祖母が「あんたがおるから生きとっても楽しくない」などと怒鳴り始めた。謝っても、暴言はやまない。「今までやってきたことが全否定された気がした」。怒りが抑えられなくなった。

 「黙ってほしくて、タオルでおばあちゃんの口をふさいだ。途中、このまま死んでしまうかもと思った。でも、その時はそれでもいいと思ってしまった」。その後、警察に電話をした。

 精神鑑定をした医師は、被告は犯行当時、ストレスによる適応障害だったと述べた。それほど追い詰められていたが、SOSは周囲に届いていなかった。

 神戸地裁の飯島健太郎裁判長は18日、「当時21歳で社会経験に乏しかったことなどに照らせば、被告人が介護負担軽減策をとることは実際上困難だったと考えられる」と指摘した。(中島摩子、広畑千春、村上晃宏)

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