兵庫県内の児童相談所(児相)に寄せられた児童虐待相談件数(2019年度)が、10年間で3・6倍の8308件に増え、過去最多を更新したことが、県への取材で分かった。虐待で幼い命が奪われるケースが全国的に相次いでおり、県は「相談をきっかけとして初期段階で虐待に気付き、命に関わるような事態を防ぎたい」としている。
県が設置する5カ所(中央=明石、西宮、川西、姫路、豊岡)と神戸市、明石市の児相が受けた相談件数の集計。明石市の児相は19年度に新設された。
19年度の相談件数は、10年度の2298件から急増。県所管分は1688件から5380件と3・2倍になり、神戸市分は610件から3・9倍の2394件に増えた。
県所管分の相談種別では「心理的虐待」の増加が著しく、386件から3255件と8・4倍に跳ね上がった。19年度は全体の60・5%を心理的虐待が占める。県は主な要因を、子どもの目の前で配偶者らに暴力を振るう「面前DV」の認知度が高まったためと分析。実際、19年度は心理的虐待の相談3255件のうち、2068件が面前DVに関するものだった。
その他の相談種別は、身体的虐待=1197件(全体の22・2%)▽ネグレクト(育児放棄)=867件(16・1%)▽性的虐待=61件(1・1%)-だった。
通報経路別では、「警察等」が3207件で59・6%に上った。配偶者らへのDVが発覚した際、子どもがいた場合に警察が通報することが多いという。
県の担当者は「相談件数が増えていることは、疑いのケースを含め、県民が関心を寄せている側面もあり必ずしも悪いことではない」とした上で、「児相だけでなく関係機関が連携して対応したい」と話した。(藤井伸哉)