新型コロナウイルスの影響で宅配需要が高まる中、「ウーバーイーツ」などの配達員による交通トラブルが兵庫県内で相次いでいる。自転車の信号無視やバイクの危険なUターンなど配達員が絡む苦情や事故、取り締まりは4月以降で30件超。県警はサービス運営会社に指導を要請している。(堀内達成)
5月2日、神戸市中央区。ウーバーイーツの大きなリュックを背負い、自転車で走っていた20代女性が進路変更をしようとしたところ、後ろから来た高齢女性の自転車と衝突。高齢女性は転倒し、足に軽傷を負った。配達員は「後ろをよく確認していなかった」と話したという。
県警交通企画課によると4~8月、配達員が絡む事故が計10件発生。信号無視など、10件の取り締まりもあった。
「ながら運転をしていた」「ふらついて運転している」
事故に至らない場合でも110番や苦情は後を絶たない。県警担当者は「普段は自転車に乗っていない人たちが配達の仕事を始め、運転に不慣れでトラブルが増えたのかもしれない」とする。
そもそもウーバーイーツの配達員は「個人事業主」。時給などで働くのではなく、配達回数や距離などで換算される完全出来高制。さらに、指定された期間内に一定数の配達回数を達成すると、報酬が加算される「クエスト」と呼ばれる制度もある。
配達員でつくる労働組合によると、回数を達成しようとして急いでしまい、事故に遭ったケースが目立つという。
こうした事態を受け、県警は9月24日、神戸元町商店街で初めて集中的な啓発を行った。ここも、「猛スピードで配達員が通行している」と苦情があった場所。配達員に安全運転を呼び掛け、交通ルールを記したチラシを手渡した。
さらに県警はウーバーイーツ運営会社の日本法人に対して、配達員への指導を要請。配達員に対して直接講習することも検討している。
一方、ウーバーイーツは10月1日から、個人事業主扱いで労災保険が適用されない配達員が事故でけがをした際に支払う「医療見舞金」を上限50万円に拡充した。配達員が事故などで加害者になった場合は、同社が対人・対物賠償責任保険で対応している。
