激動の2020年も残すところ、2カ月と少し。年の瀬を控え、困っているのが神戸・北野の異人館「うろこの家」だ。11月末から「世相サンタ」を登場させるのが風物詩となっているが、今年はモチーフとなる人物が決まらない。新型コロナウイルスで明るいニュースが少ないからとか。運営会社は「誰かいい人、知りませんか?」。(伊田雄馬)
異人館のサンタ装飾は、うろこの家を運営する「異人館うろこグループ」(神戸市中央区北野町3)が2004年、イベントの一環で始めた。当初は、巨大なサンタクロースの人形をつり下げたり、複数の異人館に隠したりしてクリスマスムードを盛り上げた。
世相サンタが登場したのは09年。うろこの家のとんがり屋根にサンタが登り、スポーツ選手や芸能人、政治家ら、その年の話題をさらった有名人をサンタが「連れてくる」という設定だ。
人選のルールは、世間に明るいニュースを提供した人であること。ワールドカップ(W杯)で優勝したサッカー女子日本代表の「なでしこジャパン」やラグビーの五郎丸歩選手、NHK大河ドラマになった戦国武将の黒田官兵衛ら、各界の「今年の顔」が選ばれてきた。
「本来なら、違う意味で選ぶのに苦労する年になるはずだった」
同グループの企画・広報ディレクター崎原朝香さんはため息をつく。東京五輪・パラリンピックで多くのアスリートが活躍したに違いなく、「人選が難しくてうれしい悲鳴、だったでしょう」
しかし、今年の話題は世界的に見てもコロナ一色。日本人のノーベル賞受賞者もいなかった。スタッフでアイデアを出し合っても、頭に浮かぶのは暗いニュースばかりという。
とはいえ、人物選びの締め切りは迫る。遅くとも10月下旬までにモチーフを決め、京都市の専属デザイナーが制作に取りかからなければ、11月下旬のお披露目に間に合わない。
将棋の王位、棋聖を獲得した藤井聡太二冠(18)と、テニスの全米オープンで2度目の優勝を果たした大坂なおみ選手(23)の名前は挙がっている。崎原さんは「2人は過去にも登場したが、今年もおそらく当確。でも他はさっぱりいなくて…」と困り果てる。
ちなみに、09年の世相サンタ第1号は、特定の人物ではない。新型インフルエンザの流行を受け、大きなマスク姿のサンタだった。