総合 総合 sougou

  • 印刷
自身が従業員ではなく個人事業主だと初めて知らされ、休業補償が受けられなかった欧州出身の男性=兵庫県内
拡大
自身が従業員ではなく個人事業主だと初めて知らされ、休業補償が受けられなかった欧州出身の男性=兵庫県内

 新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出された4月。阪神間に住む欧州出身の男性(46)が語学講師を務める専門学校も休業した。男性は派遣元の語学教室に休業補償を求めたが、「支払えない」と説明された。コロナ禍で売り上げが減った事業者を支援する持続化給付金も手続きが難航し、現時点でも受け取れていない。経緯を取材すると、雇用側の都合であいまいな立場に置かれた働き手がコロナ禍にあって、さらに不利益に直面している現実があった。(森 信弘)

 男性は2019年4月に語学教室に講師登録し、主に大阪市内の専門学校に派遣されている。専門学校は4月から6月初旬まで休講に。男性は教室に休業補償を求めたが、教室側は「支払う仕組みになっていない」と告げた。

 教室側は「(従業員としての)雇用ではなく、(個人事業主として)請負の関係にある」と説明したという。休業補償の原資にできる政府の雇用調整助成金は従業員が対象で、男性には適用されないというのだ。

 こうした請負契約の場合、請け負う業務の進め方は請負人の裁量に任されるが、講義の時間・場所とテキストは指定され、男性の裁量は限られるという。社会保険には未加入の一方で、報酬から所得税が天引きされていた。

 男性によると、講師登録の際に「レッスンに遅れないように」などの一般規約に署名し、時間ごとの報酬も示されたが、「請負契約」のような契約書はなかったという。教室側は神戸新聞社の取材に対し、「労働基準監督署や社会保険労務士などに相談した上で適切に対応した」と回答した。

 自身が個人事業主だったと初めて知った男性は、持続化給付金を申請することにした。給与所得として扱われていた報酬を「事業収入」として修正申告したが、受給に必要な書類をそろえられないでいる。

 男性は日本人の妻(38)と息子(2)との3人暮らし。妻は生命保険の外交員だが、2年前から今年夏まで育児休業し、世帯収入が減っていた。男性は「自分たちは使い捨ての道具のようだ」と憤る。

 実態は「労働者」ながら、業務委託や請負契約で働く人は「名ばかり事業主」と呼ばれる。労働問題に詳しい清水亮宏弁護士は「残業代も支払われないなど労働法規による保護が受けられず、法律のはざまに置かれている」と指摘する。

■大工や配達員、美容師、塾講師… 「法のはざま」、国は判断慎重

 働き方が多様化する中、個人事業主は大工や配達員、美容師、塾講師などさまざまな業種に広がる。実態は「労働者」の「名ばかり事業主」を巡っては、労働紛争もたびたび起きてきた。国は「事業主か労働者かは実態で判断する」と強調するが、指導の強化が課題となっている。

 コロナ禍では、楽器大手ヤマハの子会社「ヤマハミュージックジャパン」の英語教室で、講師約1200人が実態と異なる個人事業主として委任契約を結んでおり、休講に伴う休業補償が受けられないことが判明した。

 講師らの労働組合は以前から、委任契約でなく、従業員として「労働契約」を結ぶよう会社側に求めてきた。組合によると、会社側は希望者を雇用する方針を示しているという。

 政府は「会社から指揮命令を受けていれば、個人事業主でも労働関係法令が適用される」などの内容を盛った指針の作成を目指す。厚生労働省監督課は「労働法規上の労働者かは実態で判断する。これまでも労働基準監督署で指導している」とする。

 だが、外国人講師らが加入する労働組合「ゼネラルユニオン」(大阪市)は「労基署に訴えても『判断する立場にない』と言われてきた」とこぼす。清水亮宏弁護士は「労基署は人員を手厚くするとともに、踏み込んだ判断をすべきだ」としている。(森 信弘)

【記事特集リンク】新型コロナウイルス

総合の最新
もっと見る

天気(11月30日)

  • 15℃
  • 8℃
  • 10%

  • 12℃
  • 6℃
  • 30%

  • 15℃
  • 8℃
  • 0%

  • 15℃
  • 6℃
  • 10%

お知らせ