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大阪市福島区のecoeat玉川店(撮影・秋山亮太)
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大阪市福島区のecoeat玉川店(撮影・秋山亮太)
格安価格の食品(撮影・秋山亮太)
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格安価格の食品(撮影・秋山亮太)

 年間612万トン。店頭や家庭でまだ食べることができるのに廃棄されている食品の量だ。国民1人あたり48キロ、毎日茶わん1杯分のご飯を捨てている計算になる。こうした飲食物の大量廃棄を減らすために、NPO法人「日本もったいない食品センター」代表理事の高津博司さん(42)は昨年4月、賞味期限が迫る食品などを格安で売る小売店「ecoeat(エコイート)玉川店」を大阪市福島区に開設。以降、フランチャイズ契約の店舗が全国に拡大し、兵庫県では尼崎市に阪急塚口店がオープンした。食品を格安で売ることで消費者の意識を変え、食べ物に困っている人への支援へとつなげる。詳しく知りたくなって、高津さんに会いに出掛けた。(竹内 章)

 -平日の午後、老若男女のお客さんの入店が途切れません。

 「玉川店の床面積は25坪と決して広くありませんが、菓子や飲料、レトルトなど300から500品を並べています。賞味期限が迫っていたり、切れていたり、さまざまです。来店数は月5千人。価格が通常の1割という商品もあり、リピーターは着実に増えています」

 -ペットボトルのお茶30円、カップスープ39円、キムチもやし1キロ100円、冷凍の「播州地鶏」2キロ800円。価格に目を見張ります。

 「賞味期限とはメーカーが設定したもので、品質が変わらず、おいしく食べられる期間を指します。この期限を過ぎても安全上の問題が生じるわけではありません。一方、食品によっては消費期限が設定されています。これは袋や容器を開けないまま、書かれた保存方法を守った場合、安全に食べられる期限のことです。ecoeatでは、消費期限がある商品は原則扱っていません」

 「小売店には、賞味期限が当初の『3分の1』以上残っていないと店頭に置かないという商習慣があり、中には『2分の1』という店もあります。おのずと販売期限が設定され、まだ食べられるのに売り場から下げられてしまいます。そうした商品はメーカーや食品問屋に返品され、在庫として積み上がります。そのままでは廃棄するしかありません」

 「私たちが商品を譲り受けたり、買い取ったりすることで、メーカーや問屋側は処分に掛かる費用を節約できます。大量に仕入れることができれば、その分、価格も抑えられます。もちろん口に入るものですから、倉庫などでの保管状況や商品の包装状態のチェックは欠かせません」

 -店舗を開設する前に、ネット販売でスタートしました。

 「20代後半に雑貨などを扱う商社を起業したのですが、取引先から、賞味期限が短い食品について買い取りの相談を受けるようになりました。保管方法によっては商品の劣化が進むこともあり、日付よりも見た目やにおいが頼りになります。安全性がきちんと説明できれば、消費者に売れるのではと、インターネットでの販売を始め、少しずつ扱う商品を増やしていきました」

 「個人的な社会貢献として寄付や食品ロスの啓発活動を続けるうち、施設の職員や自治体の担当者から、思いがけないことを聞かされました。甘いお菓子を食べる機会がめったにない子どもや3食まともに食べていない人が珍しくない、という大阪の食糧難の現状でした」

 -海外ではなく、身の回りにも貧困問題がある、と?

 「啓発の一つと思って始めたネット販売ですが、ネットを使えない人もいます。『お金がない人には商品を寄付して、お金がある人には安く購入できる場所を提供したい』と考え、実行に移したのが店頭販売です。直接、お客さんに賞味期限や食品ロスの話もできます」

 「活動をより進めるために2017年、NPO法人『日本もったいない食品センター』をつくりました。ecoeatの売り上げは、いったん経営する商社に入り、そこから経費などを引いた分がセンターに回ります。そして福祉施設や慈善団体、生活困窮者への直接支援の経費に充てるという形になっています。センターは、出店や運営に掛かる資金や人件費がないためです。ただ、一般の小売店であれば、売れ筋の商品を回転よく仕入れることが重要ですが、われわれの場合、食品ロスとして大量に余っているものを仕入れるため売りにくく、商品の偏りがあります。倉庫代や配送料の面で、商社側が負担している部分もあり、まだ採算が安定しているとはいえませんね」

 -加盟店の全国展開は直接支援の活動を持続させるためですか。

 「寄付などの支援活動には、配送料として少なくとも年間500万円が必要です。新型コロナウイルス禍による影響で、支援を求める声は殺到しています。各店が、しっかり利益を生み出せる体力がついてくれば、寄付に回せる額が安定し、センターはより地域に貢献できるようになります」

 「センターの主な実務は、多様な商品の仕入れと寄付・販売のバランス調整ですので、企業経営の感覚が求められます。仕入れ値の交渉結果は、取引先とウインウインにもっていくよう意識しています。納品にも費用がかさみますから、商品の種類や量、場所を踏まえ、物流を安く抑えられるよう判断、手配をしています」

 -食べられるのに廃棄される商品を再び消費者へ-。そのサイクルはどうすれば太く早くなりますか。

 「商品を売るだけでなく、加工してお総菜にする試みを考えています。試しに、ecoeatの一部店舗に調理場を設置してみました。将来的には食事を安価で提供でき、子どもから高齢者まで気軽に立ち寄ることができる場所、子ども食堂の多世代版をつくりたいと思っています。行政との連携も今以上に深めたい。冷凍倉庫を任せてくれれば、商品の仕入れ・販売などのオペレーションはセンターで引き受けます。相当な支援ができると思います」

 -消費者の役割も重要ですね。

 「ネット販売を始めた頃は、注意書きをしているにもかかわらず、賞味期限切れという理由でクレームもありましたが、理解は広がっています。正しい知識が広がれば食品ロスは確実に減ります。食品ロスの4割が生じる一般家庭でも、食べ物を見直すきっかけにしてほしいです」

【こうず・ひろし】1978年4月生まれ、愛媛県出身。高校卒業後、海上保安庁に9年間勤務した後、27歳で雑貨や食品を扱う商社を創業。2017年にNPO法人「日本もったいない食品センター」を設立した。

▽ひとこと

 わが家で夕食当番を務める日、適当に食材を買い込む(しかも多め)→忘れてしまい、同じような物をまた買う→傷んだり、大幅に賞味期限が切れたりする→配偶者に叱られる-というサイクルを繰り返してきた。食品ロスの“排出源”にならぬよう、買い物上手を目指そう。

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