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体罰をした教員について「進んで告発すべき」と明示した尼崎市教委の体罰再発防止指針
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体罰をした教員について「進んで告発すべき」と明示した尼崎市教委の体罰再発防止指針

 兵庫県宝塚市立長尾中学校の柔道部顧問が生徒2人に重軽傷を負わせた事件で、同市教育委員会が、顧問の教諭(50)に傷害罪が適用される疑いを把握しながら刑事告発しなかった対応を巡り、教育現場の姿勢が問われている。隣の尼崎市は同様の体罰があれば市教委や学校が「進んで告発すべき」との方針を明文化しており、専門家は「公務員として責任放棄になるという認識が欠けている」と指摘。一方で、被害者側の意向を聞く必要があるとして、慎重さを求める声もある。(大盛周平、名倉あかり)

 背骨が折れて全治3カ月になっている-。宝塚市教委が生徒1人の重傷を知ったのは事件から1週間後の10月2日。それ以前に被害者2人がけがをして両家族が警察に相談をしていることは把握しており、市教委でも警察への対応を検討していたところだった。

 刑事訴訟法は、公務員が職務中に犯罪があると思ったときには告発しなければならない-と規定する。

 教員の体罰問題に揺れた尼崎市教委は今年6月、「体罰の程度がひどく、明らかに傷害や暴行罪が成立することが疑われる場合」は、被害者側の意向にかかわらず、学校や市教委が「進んで教員を告発すべき」とする方針をまとめた。

 しかし今回、宝塚市教委は告発を見送った。10月2日に担当者が被害に遭った生徒の家を訪ねた際、「被害届を出すのは引き止めない」との趣旨を伝えるにとどめた。尼崎市教委が定める告発方針は知っていたというが、宝塚市教委は「被害を受けた家庭の意向を大切にしようと考えた」とした。

 結果的に2人の被害者家族が10月10、11日、宝塚署に被害届を提出。翌12日夜、顧問の教諭が傷害の疑いで逮捕された。

     ◇

 兵庫県教委によると、神戸市を除く県内の公立小中高校などで、教員による児童生徒への体罰で刑事事件になったのは過去10年で少なくとも8件。ただ「体罰で市町教委が刑事告発した事例は聞いたことがない」とする。

 一方、生徒の「校内暴力」を巡って学校が警察に届けるハードルは下がっている。県警によると、生徒が教員に暴力を振るったとして摘発、補導された県内の児童生徒は最近こそ減少傾向にあるとはいえ、過去10年で166人に上っている。

 尼崎市教委の松本眞教育長(41)は体罰の告発方針について「わいせつ行為といった校内の犯罪行為が事件化されるのに、なぜ体罰だけされないのかという点が立脚点だった」と話す。現場から「指導に萎縮してしまう」との声もあるというが、「子どもの安全のためには、こうしないと変わらない」として抑止力の必要性を説く。

 文部科学省初等中等教育企画課によると、体罰を巡って市町教委が告発した例は調査をしたことはないという。担当者は「事案を個別に判断し、法にのっとって対処していくしかないのではないか」とする。

 宝塚市教委は「今後、尼崎のような方針策定の必要性も考えなくてはいけない」としている。

■ケースごとに対応を

 生徒指導論が専門の関西外国語大学の新井肇教授の話 学校には「家」的な要素があり、校内で起きた事案に警察の力を借りるのは「指導の敗北」という感覚もある。わいせつ案件と違い「熱意のあまりに」などと教員を擁護する傾向があるのも告発の例がない一因ではないか。社会で許されない暴力が学校で許されないのは当然だが、市町教委や学校の告発については一律にすべきとは言えない。被害生徒の保護者らの理解を得ながら、誰がどの時点で警察に届けるかをケースごとに相談すべきだ。

■しないのは責任放棄

 尼崎市教委が設置した体罰根絶有識者会議メンバーの四宮章夫弁護士の話 体罰は人権侵害であり、違法行為。傷害を負わせたら公務員として告発する義務があり、しないのは責任の放棄になる。市町教委や学校が告発することは体罰が問題であると自覚し、解消に向かわせる出発点になる。体罰を受けた子どもの保護者が被害届を出せば「子どもにも原因がある」などの批判にさらされかねない。被害生徒や他の先生を守るという意味でも、市町教委や学校が矢面に立って主体的に告発すべきだ。

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