新型コロナウイルスの影響で売り上げが落ち込んだ自営業者や中小企業を支援する「持続化給付金」を巡る詐欺事件が相次ぐ中、不正受給に関与したとみられる人が警察に自首しようとしたり、弁護士に相談したりするケースが増えている。捜査関係者によると、兵庫県警も摘発した事件以外に、不正受給の疑いがある事案を多数把握。手口が口コミや会員制交流サイト(SNS)で拡散したことから件数はさらに増える可能性があり、問題は底が見えない状況だ。(那谷享平)
神戸市のある弁護士事務所に9月、20代女性の家族から相談が寄せられた。
女性は受給資格のない飲食店員だったが、知人に「指南役」を紹介され、指示されるままに申請。振り込まれた100万円の一部は知人や指南役に分配した。
取り分が少ないことを不審に思った家族が警察に相談したところ、逆に不正受給に加担していた可能性を知らされた。知人には「犯罪ではない」と言われていたという。
自分も不正受給をしたことで逮捕されるのでは-。そんな不安から警察署に自首しようとする人もいる。
捜査関係者によると、県内のある警察署に「報道された事件と同じような不正受給をしてしまった」と女性から相談があった。家族に出頭を促され、「複数の知人にもやり方を紹介した」と明かしたという。
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県立消費生活総合センターによると、5~10月末、県内の消費生活センターには同給付金に関して、少なくとも33件(11月6日現在の速報値)の相談があった。「学生でももらえると思って申請してしまった。返還をしたい」など、不適切な受給を示唆する内容も一部あった。
県内では県警が8月、詐欺容疑で不動産会社役員の男らを逮捕。不正受給を含む約170人分の申請データを押収した。愛知県警が摘発した不正受給事件は、被害額が約4億円に上る可能性があるなど、全国で類似事件の摘発が相次いでいる。
中小企業庁によると、具体的な件数は集計していないが、同庁に給付金の自主返還を申し出る人が増えている。担当者は「特に被害額が高額な事件が報道された直後に一気に増える」と指摘する。
多くのケースは給付対象ではない会社員や学生らが、口コミやSNSで不正受給の手口を知ったり、加担するよう勧誘されたりして申請者になっているとみられる。
捜査員は「手続きが簡単な点につけ込んでいる。明らかになっていない不正受給は、まだたくさんあるだろう」と話す。
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中小企業庁は、事業を実施していないのに申請▽売り上げを偽って申請▽売り上げ減少の理由が新型コロナの影響ではないのに申請-について「犯罪です」とチラシなどで警告している。
一方、誤って受給した人には相談コールセンターを設け、速やかに返還するよう求めている。8月31日以前に申請TEL0120・115・570▽9月1日以降に申請TEL0120・279・292
【持続化給付金】5月に申請受け付けを開始。1カ月の収入が前年同月比で5割以上落ち込んだ場合、個人事業主に最大100万円、中小企業に最大200万円を支給。中小企業庁のホームページから申請できる。不正受給は、架空の売り上げ台帳や、虚偽内容で申告した確定申告書の控えなどを使って行われている。









