新型コロナウイルスの影響で、市民マラソン大会が軒並み中止や延期になる中、神戸でこの夏開かれ、15日にも予定されるレースがある。なぜ、開催できるのか。その答えはずばり、「密にならない」。(今泉欣也)
神戸市東部の3区(東灘、灘、中央)を走る「東神戸マラソン」。2011年11月、「神戸マラソン」のコースから外れた東灘、灘区の住民有志が“対抗心”で企画した、日本陸連非公認の草レースだ。春と秋の年2回あり、秋は神戸マラソンと同じ日に開かれる。
都賀川河川敷(灘区)をスタートしてHAT神戸を巡って東へ。住吉川(東灘区)から六甲アイランドを経て都賀川に戻ってゴール。公道やランニングコースを通り、おおむね42・195キロという。交通規制も沿道の応援もない。ランナーはレース前に配られる手書きの地図だけを頼りに走る。もちろん信号は守らねばならない。
途中3カ所のエイドステーションでは、ボランティアが待ち構える。ドリンクだけでなく、ランナーの足を引っ張るかのようにおつまみ、お酒まで振る舞われる。
他にないユニークさが評判を呼び、定員120人の約7割が県外からの参加。過去には神戸マラソンを完走後、続けて東神戸も走破した強者がいるという。
元々規模が小さく、ペースもまちまち。エイドでリタイアするランナーもいる。密になりにくいため、今春は予定通り4月の開催を決めていたが、国の緊急事態宣言を受け、感染が落ち着いた7月12日に開催。改めてランナーを募ったところ、各地で大会中止が相次ぐ影響もあり、通常2時間ほどで埋まる出場枠が40分で定員に達した。
当日は、感染防止策としてゼッケン代わりに番号入りのマウスシールドを配ったほか、各エイドに消毒液を用意。軽食はあらかじめ小分けにした。
ランナー同士で距離を取るなど協力し合う姿が各所で見られたといい、運営者の慈(うつみ)憲一さん(54)は「皆さんの紳士的な対応に助けられた。感謝の言葉も掛けてもらい、これまでで一番いいレースだった」と振り返る。
15日に開かれるはずだった神戸マラソンは、実質中止に。「今回だけでもこちらを『神戸マラソン』と呼べるんじゃないか」と笑う慈さん。「コロナ禍でもランナーが安心して楽しめるレースにしたい」と準備を進めている。
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■アプリ活用、密回避で広がるオンラインマラソン
新型コロナウイルスによる感染拡大を防ぐため、通常開催を断念した各地の市民マラソンで広がっているのが、スマートフォンのアプリを活用したオンラインによる代替大会だ。
参加者は指定されたランニングアプリなどをダウンロード。決められた期間内に必要な距離を走り、タイムを計測して大会側にデータを送る。好きな時間に、好きな場所で実施できるため、ランナー同士の密が避けられるほか、大会によっては走る回数を分け、累計距離で“完走”するのも可能だ。
「普段の練習と変わらない」と満足できない声もあるが、参加料を徴収し、Tシャツや地元特産品を贈るなど大会側も魅力アップへ工夫を凝らす。
3月に名古屋ウィメンズマラソンで行われたほか、神戸マラソン(11月1~20日)、西脇子午線マラソン(ハーフ、12月~21年1月)、丹波篠山ABCマラソン(21年2~3月)などでも実施される。
