兵庫県明石市のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で9月、元職員の女が入居者を虐待していた事件で、同市の緊急調査チームは13日、調査・検証結果を発表した。元職員は80代男性に対し、一晩で40回以上、殴る蹴るなどの暴行を繰り返したことが判明。新たに70代男性への暴行も認定した。市は施設側に職員配置の改善などを求める行政指導を行った。
報告書によると、元職員が入居者に怒ったり怒鳴ったりする心理的虐待が日常化していたと言及。1人で夜勤に入っていた9月20日夜から21日早朝にかけて、認知症の80代男性に計42回暴行。髪をつかむ、ベッドから引きずり下ろすなどの行為もあったという。
70代男性には頭をたたいたと認定。この男性も認知症で要介護3だった。行為を撮影した映像や傷といった物証はないが、本人が自ら男性への謝罪文を提出したことなどから「信用性がある」と判断した。
市は、原因について「一方的にストレスをぶつけた」と元職員の個人的資質が大きいとした上で、自立型の住宅に介護度の高い入居者がおり、夜間業務を1人で担うなど「環境的要因」も指摘。過酷な勤務で職員が感情を抑制できなくなるリスクがあっても休めないなど勤務環境の要因も指摘した。
市は「個人の資質や施設特有の体質のみに起因すると評価するのは相当でなく、他の施設に共通する課題が多い」と結論付けた。その上で、市内のサ高住と有料老人ホーム計27施設を訪問し、研修の実施状況やマニュアルの有無、市への通報体制などを調査。不十分な点は改善指導を行う。(小西隆久)