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入居者への虐待行為について、報道陣に説明するサービス付き高齢者向け住宅「はやしの南」の管理者=10月19日、明石市林2
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入居者への虐待行為について、報道陣に説明するサービス付き高齢者向け住宅「はやしの南」の管理者=10月19日、明石市林2
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 高齢者への暴力、介護放棄、無資格者による医療行為…。全国的に高齢者への虐待が増加し、兵庫県内の施設でも相次ぐ。穏やかな余生を過ごすはずだった養介護施設が、虐待の現場になった。「終(つい)のすみ家(か)」で何が起きているのか-。

■密室の暴力立証難しく

 「これは…。警察に言わなあかんな」

 ノートパソコンの画面を見つめていた同県明石市職員2人が息をのんだ。10月14日、市役所の一室。サービス付き高齢者向け住宅「はやしの南」の管理者(51)が持ち込んだ映像だった。

 同住宅で女性職員(57)が、入居男性(88)の頭をはたき、髪をつかむ様子が鮮明に映し出された。

 1週間後、市は緊急会見を開き、泉房穂市長は沈痛な面持ちで言葉を絞り出した。「まさに今、認知症の人をみんなで支えていく施策を展開していく中で、このような事態が発覚した」

 男性は重度の認知症で、要介護4。虐待会見は、認知症の患者とその家族を支える市の独自施策が始まる前日のことだった。

    ◇    ◇

 虐待は9月20日午後9時前から始まった。映像を分析した市によると、女性職員が計9回にわたって男性の部屋に立ち入り、殴る、蹴る、踏みつける動作は計42回に達し、翌21日午前4時すぎまで続いた。

 男性の体には、すり傷や内出血があったが、認知症の男性には説明すらできず、暴行との関連を突き止めることは困難だった。

 女性職員の夜勤明けに男性の体に傷があった。施設の管理者が、部屋にビデオカメラを据え付け、その映像が逃れようのない証拠となった。

 女性は70代男性の頭をたたいたことも認めたが、認知症などがある入居者が数人おり、警察や市の調査でも全容解明は困難。「本人が被害を訴えられなければ、虐待はなかったことになるんです」。担当の市職員が力なくこぼした。

 虐待があっても転居は容易ではない。発覚後、被害を受けた男性の家族は施設の管理者にこう伝え、継続入居を求めたという。「ここを出ても、(親を)見てもらえる所がない…」

    ◇    ◇

 2014年、神戸市灘区の特別養護老人ホーム「きしろ荘」の職員が女性入所者のオムツ姿や上半身裸の姿をスマートフォンで撮影し、無料通信アプリLINE(ライン)で別の職員に送信していたことが判明。同市は「心理的虐待・性的虐待」と認定していた。

 6年後の今年、新たに事案が発覚。入所者を1~2週間に1度しか入浴させず、職員から「臭っている。入浴させないと」と声が上がるほどだった。また、資格のない施設長が、胃にチューブで栄養を送り込む「胃ろう」を続けていた。

 辞職した元施設長の男性(50)は「風呂に入れないというのは虐待。14年の虐待に驚いていた私がしてしまった。胃ろうも法律違反だと分かっていたが、どうしようもなかった」と、深刻な人手不足が不適切なケアの背景だと嘆いた。

 発覚のきっかけは職員の告発だった。閉ざされた空間。告発がなければ、今も続いていたかもしれない。(小西隆久、上杉順子)

【養介護施設職員の虐待 突き飛ばし骨折、いやがらせ画像…】

 兵庫県高齢政策課が、2018年度の養介護施設職員による高齢者虐待24件の内容を明らかにした。

 身体的虐待では、高齢者を突き飛ばして骨折させる事案もあった。心理的虐待では、高齢者をスマートフォンで撮影し、画像を加工してLINEで送信。高齢者の要求に怒鳴ったりするようなことも起きている。

 県は虐待要因として、加害職員側の問題(感情がコントロールできない、倫理観の欠如、虐待への認識不足など)や、職場環境の問題(業務負担、相談体制、夜間の緊急時の連携不足など)を上げ、介護士らを対象に「高齢者虐待対応力向上研修」を開き、再発防止に取り組んでいる。

 厚生労働省は、19年度の虐待については12月末の公表を予定している。(井上 駿)

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