新型コロナウイルスの感染者が急増する中、感染者や医療関係者らへの差別・偏見をなくすことを目指す「シトラスリボンプロジェクト」の取り組みが、加古川市をはじめ兵庫県内でも広がっている。感染からの回復後に「ただいま、おかえりって言いあえるまちに」を合言葉に、愛媛県の市民グループが始めた活動。兵庫県内の学校や企業なども、共感を示す三つ輪が重なる黄緑色のリボンを付けたり、イラストを掲げたりしている。(斉藤正志)
同プロジェクトは松山大(松山市)准教授の甲斐朋香さん(50)ら6人のグループ「ちょびっと19+(プラス)」が4月、愛媛県内で感染者が出たことをきっかけに始め、全国に広がった。シンボルとなるリボンの三つの輪は、「地域」「家庭」「職場・学校」を示す。
「感染したり濃厚接触者になったりした人がいても、登校できた時は『ただいま』『おかえり』と言える学校をつくりましょう」
今月2日、加古川市立野口南小学校(同市野口町古大内)の全校朝会で、6年生が呼び掛けた。6年生は道徳の授業などで活動について学び、全児童731人分のリボンを作って配布。児童はランドセルなどに付けているという。男子児童(12)は「感染した人がいても、治ったら優しくしたい」と話した。
同市内では市立氷丘南小学校(同市加古川町溝之口)などの学校園も取り組み、地域で配る民生・児童委員もいる。
介護、医療用品販売や高齢者への配食サービスを手掛ける「ウェル」(神戸市中央区)は、従業員が名札にリボンを付け、配達用のバイクにもリボンの絵をあしらったシートを貼っている。業務部長の京原宏幸さん(47)が7月に発案。取引先の医療機関に出入りしていた別の会社の従業員が感染し、退職を余儀なくされたと聞いたことがきっかけだった。
京原さんは「誰もが感染する可能性がある。偏見なく、うまくコロナと付き合える社会になるように、自分たちができることをしていきたい」と話す。
家族介護者の交流会などを催しているNPO法人「アイリス」(兵庫県伊丹市)は、リボンを描いたしおりやチラシを作り、伊丹市社会福祉協議会などを通じて配布。同市内の飲食店やパン店などにステッカーを貼ってもらったという。
