高病原性鳥インフルエンザが確認された兵庫県淡路市の養鶏場。25日夜、周辺にはテントが張られ、防護服姿の関係者が慌ただしく行き交った。「ここでまさか…」。自衛隊の拠点確保など作業が進む中、近隣住民は不安を口にした。感染は各地で相次いでおり、兵庫県も防御策を強めたばかり。深夜の会見に臨んだ井戸敏三知事は「誠に残念」とするメッセージを出した。
民家が点在する田園地帯。養鶏場には投光器を積んだトラックやワンボックス車などが頻繁に出入りした。
周囲は消毒用と思われる白い粉がまかれ、現場に向かう道には「関係者以外通行禁止」という看板が立てられた。近くに住む60代男性は「香川で確認されており、距離が近いので心配していたが、身近な場所で出て驚いている」と話した。
淡路市教育委員会は、閉校した小学校を自衛隊の活動拠点とする要請を県から受け、準備を進めた。登校に支障が起こらないよう、26日以降のスクールバスの運行経路変更なども検討。保護者らに伝えるための情報収集など対応に追われた。
一報を受け、兵庫県庁にも衝撃が走った。
25日午後10時40分、防災服姿の井戸知事が会見。「まん延防止、防疫対策に万全を期していく」と述べた上で、「仮に鶏肉や卵を食べても人に感染することはない」と理解を呼び掛けた。
人影がまばらな夜の庁内では、鳥インフルエンザに対応する畜産課の職員が多く残り、次々とかかってくる電話に応対したり、資料を確認したりしていた。「香川県の感染などを受け、県内の全養鶏場に消毒の知事命令を出したばかりだった」。職員は声を落とした。
兵庫県内では2004年2月に、八千代町(現多可町)内の食肉処理場に持ち込まれた鶏5羽から感染が確認された。半径30キロ圏内の農家に対し、鶏や卵などの移動を1カ月近く制限。影響は京都府と兵庫県のほか福井県、大阪府にも及んだ。
