兵庫など8府県4政令市でつくる関西広域連合は1日、設立から10年を迎えた。節目を前に神戸新聞社が構成自治体に成果や課題を聞いたところ、ほぼ全ての首長が被災地支援を成果とした一方、発足時から目的に掲げてきた国からの権限や財源の移譲など地方分権は進んでいないと回答。近年は発信力の低下が懸念されており、新型コロナウイルス感染症の対応にも課題を残す。
広域連合は分権型社会の実現を掲げて2010年12月に発足。当時の橋下徹大阪府知事らの発信力を前面に、国の出先機関を原則廃止し、権限や財源、人員を「丸ごと移管」するよう求めてきた。ただ、10年を経た今も実現していない。
神戸新聞社が11月、構成自治体の首長に実施したアンケートやインタビューでは、現状への不満が浮き彫りに。解決できなかった課題について、井戸敏三兵庫県知事は「地方分権の進展。国からの権限移譲が基本的に進んでいない」と説明。11府県市が地方分権の停滞を挙げた。
一方、11年3月の東日本大震災では、府県ごとに支援の対象県を分担する「カウンターパート方式」を導入し、存在感を発揮。ドクターヘリの共同運航など、府県を超えた広域事務で実績を積み上げた。
被災地支援については、9府県市の首長がアンケートで成果として列挙。滋賀県はドクターヘリの運航に加え、琵琶湖の漁業被害に向けた水鳥・カワウの生息調査を成果とした。
コロナ禍の対応は、医療資材の融通やPCR検査の一部受け入れがあったが、情報共有や住民への注意喚起にとどまり、十分に対応できたとしたのは6府県市のみ。吉村洋文大阪府知事は「危機意識の共有ができたが、統一的な対応は難しかった」と振り返った。
広域連合の課題を議論する検討会の座長を務めた同志社大大学院の新川達郎教授(行政学)は「地方分権がどんな利益になるかを示し、住民に理解してもらうことが重要。例えばコロナ対策などで協力するなど、住民や経済団体などと幅広く連携していくことが求められる」と指摘する。(紺野大樹)
