総合 総合 sougou

  • 印刷
住宅の庭で柿の木に登る子グマ=10月、富山県黒部市
拡大
住宅の庭で柿の木に登る子グマ=10月、富山県黒部市
神戸新聞NEXT
拡大
神戸新聞NEXT

 冬眠を前に餌を求めるクマが活発に行動している。富山県内各地で目撃が相次ぐ中、北日本新聞社(富山市)に読者からこんな意見が届いた。「実のなる木をもっと山に植えればいいのでは」。木の実でおなかが膨れれば人里に来なくなるという理屈だが、対策は一筋縄ではいかないようだ。

 「魚津・坪野・コナラ500本」「南砺(なんと)・利賀・ミズナラ4830本」。富山県森林政策課が作成した資料には地名と樹種、本数が細かく書き込まれていた。県の「水と緑の森づくり事業」の一環として行われた植樹の概要だ。事業は害虫被害で荒廃した山林の再生が目的で、2012年度から5年計画で5万本を植えた。ブナやコナラ、オニグルミ、クリなどクマが好む実のなる広葉樹ばかりだ。

 ほかにも、民間の有志による植樹や下草刈りは県内各地で行われている。木々が育って豊かな森が復活すれば秋の実りが増え、人里にクマが来なくなるかも。そんなバラ色のシナリオを思い浮かべたのだが…。

 「それほど簡単な話ではないですよ」。同県森林研究所の中島春樹副主幹研究員の言葉に、冷や水を浴びせられた気分になった。

 ブナは周囲の木と作況が似通う「同調性」が強く、いくら植えても凶作の年は「実のない木」が増えるだけという。同研究所によると、統計ではブナの豊作は5~7年に1度。原因は分かっていない。

 そもそも、今秋にクマの出没が多発する予兆は夏の時点であった。「全然実が付いていませんでしたね」と言うのは、8月に県内の国有林23カ所でブナを調べた富山森林管理署の門原秀人統括森林整備官。全地点で結実が確認されなかったのは05年の調査開始以来、初めてだった。

 コナラやクリは、ブナに比べて同調性が低いというが、中島さんは「クマ対策を目的に植樹する善しあしは、一概には言えませんね」と慎重な口ぶりだ。

 なぜだろう? クマ問題に詳しい富山市ファミリーパークの山本茂行名誉園長(70)に尋ねると、やや強めの口調でこう返ってきた。「森林をあるべき姿に戻すというのは大事なことですよ。でも、植樹ではクマ問題は解決できません」

 数が増え、強いクマに山を追われた弱いクマが人里に出没している、というのが山本さんの見解だ。事実、県自然保護課によると、県内のクマ生息数は08年度調査で推定740頭だったが14、15年度調査では1290頭。調査方法が異なるため単純比較できないものの増加傾向はうかがえる。

 山本さんは、凶作に備えた過度な植樹でさらにクマが増えてしまうと指摘し、「里山をきちんと手入れするなど、人と野生動物がすみ分けるための対策を講じるべき」と話す。(北日本新聞社)

     ◇     ◇

■襲われ負傷、兵庫県内でも被害

 兵庫県佐用町では11月11日朝、散歩中の女性が親子とみられるクマに遭遇し、腕や顔をかまれて重傷を負っている。クマと人とのすみ分けは兵庫の中山間地域でも課題となっている。

 クマは本来臆病な性格で、人的被害を防ぐには下草や柿の木などを刈り、見通しをよくする対策などが有効とされる。県は2017年度から、クマと人の生活圏を明確化する管理計画を策定。19年度からは、集落内の放置果樹の伐採や下草刈りを支援する事業を始めた。

 県森林動物研究センター(丹波市)は「クマが冬眠を始める12月中旬までは最大限の注意が必要」とし、出没しやすい集落では、複数人で行動▽鈴やラジオなど音の出るものを携帯▽生ごみのコンポストを置かない-などを呼び掛けている。(神戸新聞社 竹本拓也)

総合の最新
もっと見る

天気(1月23日)

  • 11℃
  • 9℃
  • 70%

  • 9℃
  • 6℃
  • 80%

  • 10℃
  • 8℃
  • 70%

  • 10℃
  • 7℃
  • 80%

お知らせ