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宝塚市立長尾中の武道場に掲げられた垂れ幕=宝塚市長尾町
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宝塚市立長尾中の武道場に掲げられた垂れ幕=宝塚市長尾町

 その後も暴行は執拗(しつよう)に続いた。

 9月25日午後4時半すぎ、柔道部顧問の男(50)は生徒を10回以上投げつけ、次は後ろから首を絞め始めた。「片羽(かたは)絞め」と呼ばれ、失神させるのが目的の「絞め落とし」といわれる行為だ。生徒は脚をばたつかせてもがき、間もなく気を失った。すると柔道部顧問の男は馬乗りになり、激しいビンタで目を覚まさせる。

 わずか2年前の2018年4月、全日本柔道連盟(全柔連)は「不適切で暴力的な行為」として指導上の絞め落としの根絶を呼び掛けていた。福岡市や福島県でトラブルが相次いだためだ。柔道部顧問の男がそれを知らないはずはなかった。

 中学・高校時代には兵庫県内の一貫校で柔道部に所属した。目立った成績は収められずに大学時代は競技を離れるも、企業や私立学校の臨時講師を経て同県宝塚市で教員に採用されると、すぐに柔道部の顧問に就く。中学生の指導に全柔連の資格は必要ないが、基礎的な指導力を有する「C指導員」を自主的に取得した。

 指導には熱心と評判だった。長尾中の生徒に「優しいクマさん」とも呼ばれた。体が大きく、おっとりとして面倒見がいい。長尾中に赴任し4年間は体罰で問題になることはなかった。

 中高時代に同じ柔道部だった男性は首をかしげる。「私たちの恩師は手を上げなかった。他校の生徒が試合会場で先生に殴られるのを見るたび『なんで暴力を振るうんやろ』と一緒に顔をしかめていたのに…」

 失神した生徒は目覚めると武道場を出ようとしたが、再びつかまれて技を掛けられる。「怖かった」「先生(副顧問)も助けてくれない」。部員約10人は声も上げられない。生徒は技がとけた隙に脱出し、暴行はもう1人の生徒に移った。嫌がるのを無理に眼鏡を外させ、寝技を繰り返して首に軽傷を負わせた。

 11月24日、神戸市中央区の兵庫県庁。柔道部顧問の男の懲戒免職を発表した会見で幹部が語った。

 「本人はあくまでもやっている時は指導という認識だったようだ。厳しい指導が必要だと思っていた」

 ここに体罰の本質がのぞく。事件後、柔道部顧問の男は普段からアイスを差し入れてくれる卒業生グループの一人に電話を入れていた。

 思いの込められた品を管理できなかったと謝って続けた。「『盗み食いなんて泥棒といっしょやろ』。そう叱るつもりがやりすぎてしまいました」と。

 悪気なく、暴力を指導の一つと考えている。学校教育法は、子どもの不正・不当な行為に戒めの制裁を加える「懲戒」を指導と認めつつ、体罰を禁じる。今回に限らず、多くの体罰はその境界線上をいつの間にか越えて繰り返されてきた。

 動機は指導上の懲戒でも、常軌を逸していた。市教委や学校は柔道部顧問の男を過去に3回も処分しながら、本人に自らの異常性を気付かせることができなかった。

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