神戸市が同市須磨区で進める都市計画道路「須磨多聞線」の建設を巡り、周辺住民ら571人が17日、整備事業への公金支出は違法などとして、支出の差し止めや損害賠償約1億円を求める住民訴訟を神戸地裁に起こした。半世紀以上前に計画され、市と住民の対立は2度の公害紛争調停でも解決できず、是非の判断は法廷に移った。
須磨多聞線は須磨区と垂水区を結ぶ全長約7キロ。1968年に渋滞緩和などを目的に計画が決定された。阪神・淡路大震災後、地域防災力の強化も目的に加えられ、事業認可された。
訴訟となったのは、山陽電鉄線路を高架橋でまたぐ521メートルの工区。住民は1997年から約15年間、2018年から約2年間の調停に臨んだが、打ち切りとなった。
訴状などでは、事業の目的だった交通渋滞は既に緩和されているとし、「必要性がない中で建設を進めることは都市計画法などに反する」と指摘。建設による交通量増加で事故の危険性が高まるほか、「閑静な住宅地という地域の特性が失われる」とも訴えている。
提訴後に会見した原告団長の宗岡明弘さん(67)は「神戸市は調停の期日に一度も出席せず、住民と真摯に向き合わなかった。建設を前提にしない話し合いに応じてほしい」と話した。
神戸市道路工務課の担当者は「須磨多聞線は災害時の緊急輸送道路にも位置付けられ、意義のある計画。理解を得られるよう住民と協議したい」と話した。











