コロナ禍の技能実習生をテーマにした写真グラフ「ドキュメン撮る」(9月24日付朝刊)で取り上げたベトナム人のグエン・ティ・モン・トゥエンさん(28)が今月9日、予定より約8カ月遅れて帰郷した。自宅に戻るまでの経緯をスマートフォンのビデオ通話を使って取材すると、隔離の上に外出を禁じられるなど、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う出入国の厳しさが改めて浮かび上がった。(斎藤雅志)
トゥエンさんは兵庫県加東市内の企業で3年間働き、実習期間を終えた今年4月に帰国するはずだった。しかし、航空会社がベトナム便を運休するなどしたため、足止めを余儀なくされた。
神戸市内で同じ境遇の友人と共同生活をしながら、定期便の再開を待つ日々。ベトナムの知人を通じて成田発ハノイ行きの航空券と入国後の隔離用ホテルを予約し、出国できたのは11月24日のことだった。
「突然運休になってまた帰れなくなるのではないかと、搭乗までは不安で仕方なかった」といい、「席に座って、ようやく帰れるんだという実感が湧き、とてもわくわくした」と振り返った。
帰国後はベトナム政府の指示に従い、ホテルで14日間の隔離生活を送った。
「3人部屋で、食事はホテルのスタッフがドアの前まで運んでくれた。同室の人とは、感染するかもしれないのでほとんど会話しなかった。マスクは2重にしていた」
PCR検査を11月25日と12月7日に受け、いずれも陰性判定だったため帰宅が許された。ただ、ベトナムでは、海外からの帰国者はさらに14日間の自宅待機が必要。トゥエンさんは12月23日まで、外出禁止が続いている。
自宅に戻ったとはいえ、家族団らんもままならない状態。「父母はともに高齢。用心して、窓越しに会話をするといった対策を取っている」という徹底ぶりだ。
ベトナム国内の感染者数は計1413人(12月21日現在)。死者は計35人で、12月は1日の感染者数が10人以下と、発生が抑えられている。一方、感染者数の増加に歯止めがかかっていない日本について、トゥエンさんは「今、とても油断していて危ないと思う」と心配する。
今、トゥエンさんが心待ちにしているのは、婚約者と直接会える日が来ること。「自宅待機の期間が終われば、まず結婚記念の写真を撮影したい」と声を弾ませる。「結婚式ではたくさんの人に祝ってもらいたいので、早くコロナが収束することを願っている」









